洗髪設備がない理美容店を違法化!? 既存の理美容店VS低価格カット店の争い
―[[おかしなルール]報告書 最終回]―
「暴走族の特攻服に刺繍をしてはいけない」「ゴミを34種類に分別して捨てなくてはいけない」など、日本にはびこる”おかしなルール”を報告してきた本連載企画。最終回となる今回も、読者から寄せられた声も含めて、その是非を問う取材を敢行! これらのルールは果たして、”悪法”か?
対象>>>【低価格カット店】
洗髪設備がない理美容店は不衛生?
「このままでは、低価格カット店が少なくなってしまうのでは?」
SPA!読者から懸念の声が上がったのが、現在全国で条例化されつつある、理美容店にシャンプー台などの洗髪設備の設置を義務付ける理容師法、美容師法の施行条例改正案だ。
すでに熊本、群馬など23道県で施行され、’10年の12月中に千葉県でも可決される見込みがあるこの条例。理容生活衛生同業組合を中心とした業界団体が、髪のカットを専門にする低価格カット店に対して「髪を洗わなければ不衛生」と指摘し、各都道府県に対して理美容店の洗髪台設置の義務付けを請願しているというものだ。
しかし、ユーザー側にしてみれば「家で洗えば不衛生でないのでは?」と思うのが本音。なぜ、このようなことが問題視されているのか組合関係者に問い合わせたところ、「カット店の吸引設備では、散発後の微小な毛を完全に除去することが難しい。すると、帰宅中に毛が飛散してしまい、不衛生や感染の原因に繋がる」との答えが。
「それが本当ならば、既存の理美容店すべてにおいてシャンプーを伴うカットを義務づけるべきでしょう。しかし、現実には”カットのみ”を選択可能な理美容店が数多く存在します。これでは経営努力を避けたい既存の理美容店からの”いちゃもん”と言われても仕方ありませんね」(ウェブサイト『変な法律』管理人のなかむらいちろう氏)
また、この条例では、「低価格カット店の進出に恐れをなしている既存の理髪店の店主が、理容組合などを通じて”票狙い”の県議会議員などに働きかけ、条例を次々に可決させている」(『へんなほうりつ』の著者のり・たまみ夫妻)という意見も。もし仮にこれが利益目的でつくられた条例だとすれば、当然許されるべきではない。自分の住む街から低価格店が消える前に、真剣な議論が必要だ。
【なかむら いちろう氏】
ウェブサイト『変な法律』管理人
’69年生まれ。立命館大学法学部卒。’00年にウェブサイト『変な法律』を開始。著書に『大爆笑「変な法律」集「俺の酒が飲めねーか」は犯罪です』(講談社)
【のり・たまみ夫妻】
『へんなほうりつ』著者
夫婦のフリーライターユニット。世界10か国に滞在するなかで各国の法律に興味を持ち、独学で学ぶ。『へんなほうりつ』(小社刊)など、法律関連の著書多数
イラスト/テラムラリョウ
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