経営破綻する会社のメンタリティは『ニート』に似ている
5年先まで生き残れる会社と、生き残れない会社の違いとは、一体何なのだろうか。ダメになりやすい会社の共通点を、産業構造、企業風土、財務状況などの観点から探っていく。あなたの会社は大丈夫だろうか?
◆消える会社の共通点:経営者が「見たいものしか見ない」
前回の「なぜ家電メーカーは苦境なのか?」(https://nikkan-spa.jp/315877)で挙げたような「時代の変化」はある意味「天災」。天災は避けがたいが、天災に対する判断ミスは「人災」だ。事業再生のスペシャリストとして、数々のダメ企業に携わってきた島出純次氏に「人災」を招きやすい企業風土について解説してもらった。
「経営難に陥っている企業をこれまで何社も見てきましたが、共通する問題点の根底にあるのは『経営者もやはり人間である』という事実。感情を押し殺して、やりたくないリストラをやらなくてはならないような場面でも、今までやったことがないので気が進まないという感情に負けて、決断を先延ばしにしたまま今に至る……というようなケースです。そういう会社に見られる典型的な“症状”は、働かないベテラン社員が堂々と放置されていること。若い社員がそれに対して不満を表明しても『そんなこと言わずに皆で頑張ろう』などと言って逃げる。このように感情に流されがちな経営者の下では、常識に照らして考えると『なんだよソレ』と言うしかない、妙な経営判断が下されがちです」
感情に流されやすい経営者ほど、「自分が見たいようにしかモノを見ない」のも特徴だ。
「新しいことに対しては、とにもかくにも拒否姿勢を示す。新しいことを正しいと認めると、自分たちのやってきたことが間違っていたように思えるのでイヤなんですね。なるべくなら、今まで儲かってきたことを続けて、これからも儲けたい。その環境を守るためだけに全力を尽くすんです」
かつての優良企業が窮地に陥る、代表的なパターンのひとつだ。
「自分が見たいようにしかモノを見ない経営者は、ユーザーの嗜好の変化や価格感度の変化などにうまくリーチできなくなってしまう。ユニクロが有名になり始めたころ、『戦っている土俵が違う』とか言って無視していた百貨店の経営者がいたのですが、本音は『戦っている土俵が違うと思いたい』ですよね。結局、今や百貨店にユニクロがテナントとして入っている時代になりました」
この手の経営者は、慣れ親しんだお金の使い方を変えようとしない――と島出氏は続ける。
「すぐれた技術で性能の高い商品を開発して勝負していた会社が、ユーザーにしてみればオーバースペックになっているのに、それでも開発を続けてより高い技術を作ってしまうとか。商品が成熟したら、今後はいかに効率よく売るかというようなことにシフトしなければならないのに、それでも開発にお金をかけたいんですよね」
これまたどこかで聞いた話だ。
「いざとなったらなんでもできる、やればできるんだという言い訳をしつつ、でも失敗するのがイヤなのでやらない。現実を見ないふりをして選択を先送りし、『時期が悪い』とか理屈をつけて己の怠慢を正当化する。経営破綻に陥りやすい会社のメンタリティって、『ニート』に似たところもありますね」
【島出純次氏】
企業再建のスペシャリスト。慢性的な営業赤字に陥っていた老舗企業にて常勤取締役を務め、黒字転換および4年連続で成長させた
イラスト/もりいくすお
― [5年以内に消える会社]の判断基準【3】 ―
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