「自己啓発」は情熱よりコストパフォーマンスが大切だ
―[「ポジティブ」という病]―
◆自他共に認める「ポジティブすぎるバカ」が語る “ポジティブ”力の危険性とは?
一見バカに思えるほどのポジティブさを武器に、トラック運転手からIT社長となったジョーカー福留氏。そんな福留氏も、異業種交流会などに漂うポジティブな空気は苦手だったという。
「会社の経営が傾いた時期に、仕事を取ってこようとさまざまな交流会に参加しましたが、やたらと仲間を強調したり、互いに感謝・肯定し合ったりする雰囲気が微妙で。実際にそこから生まれた仕事と費やした時間を計算すると意味がないと気づき、1年ほどで行かなくなりました。まあ、ずっとそこに通う人には、『お金に換えられない価値がある』という前向きな理由があるんでしょうけど(笑)」
福留氏がその雰囲気に違和感を覚えたのは「ポジティブ力の危険性」を経験から知っているためだ。
「僕は『これからはIT力が年収に差をつける』という記事を見て、パソコンが使えないままトラック運転手からIT業界に転職しました。面接には落ちまくりましたし、転職後もイタい失敗を繰り返しています。それでもへこたれず、挑戦を続けられるしぶとさは、僕の武器かもしれませんが、はたから見たら香ばしい人ですよ(笑)」
だからこそ、無闇にポジティブになることを勧めたりはしない。
「『挑戦した結果、好きなことを仕事にできて最高ですね!』と言われたときは、『でも僕、住宅ローンが払えなくなって自宅を手放しましたよ』と、ポジティブに生きることの弊害を伝える。安定志向の人などが無理にポジティブになると、『こんなはずじゃなかった』って後悔するはずです。だから、僕みたいな生き方『も』あると伝えるようにしています」
無闇やたらなポジティブさは、むしろ弊害になりかねないのだ。
「前向きな言葉を口にしたりして気分がよくなっても、ただの現実逃避ですし、行動やアウトプットが伴わないとダメだと思うんです。セミナー等で、ただ熱く前向きな言葉だけを浴びせられると、僕は『アツッ』って思うし、中には一緒に燃え上がっちゃう人もいる(笑)。でも結局、鼻息荒く燃え上がった人は途中で消えて、自然体の人だけが生き残っている。無理に前向きになる努力をするくらいなら、コンテンツや技術を磨くほうが、成功に近づくと思いますよ」
【ジョーカー福留氏】
変態企業カメレオン代表。「妄想ライセンス」などのバカグッズの企画制作、「バカサミット」の企画運営を行い、コンビニアイス評論家・アイスマン福留としても活躍。著書に『バカが武器』
― 「ポジティブ」という病【5】 ―
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