住みたい街ランキングNo.1は吉祥寺 女性刺殺事件の影響受けず
3月8日、SUUMO(スーモ)編集部によるリクルート住まいカンパニー2013年版『みんなが選んだ住みたい街ランキング 関東版』が発表された。今年も昨年に引き続き、東京・吉祥寺が堂々の1位を獲得。先月28日に起きた女性刺殺事件より前におこなわれた調査だったこともあり、不動のNo.1の座を陥落するような事態にはならなかった。
「やっぱり1位は嬉しいですよね(笑)。この業界では2月から3月にかけてが物件探しのピークなので、多少事件の影響も出るかと思っていたのですが、仲介数などは事件前とさほど変わっていません」
現在大改装の真っただ中にある吉祥寺の駅近くで不動産業を営む男性もこう話すように、吉祥寺の人気にそう易々とブレーキがかかるというようなことはないようだ。不動産業者の男性が続ける。
「これからの花見シーズンには見物客で溢れる井の頭恩賜公園を中心に緑も豊富ですし、オシャレで個性的な店も多い。ハモニカ横丁など古きよき文化も多く残っている一方で、アトレやコピス吉祥寺なども続々オープンし、今秋には現在工事中の駅ビルが完成予定です。交通の便も抜群。武蔵野市は人口1人当たりの病院の数が全国一位など住みやすさの面も人気の理由でしょう。ただ、『住みたい街ランキングNo.1の街なので、部屋を探しにきました』というお客さんも多い(笑)。実は長年にわたる人気の理由は、このランキングそのものにあるんじゃないかとも思いますよ」
ある意味、「吉祥寺」という街をブランド化してしまったこの住みたい街ランキング。複数の雑誌やテレビ企画、インターネットメディアで目にすることがあるが、その草分け的な存在は、やはり『東京ウォーカー』(角川マガジンズ)だろう。
ちょうど今から10年前に当たる2003年の特集記事を眺めると、1位は三軒茶屋で、吉祥寺は6位。現在も上位にランクされている下北沢や中目黒はそれぞれ2位と3位。全体的に代官山(4位)や広尾(7位)、青山(8位)といった都会のラグジュアリー感が漂うエリアが人気となっているが、10位にお台場が入っているところなどは当時の時代を感じさせる。
最近では、秋葉原と並ぶサブカルチャーの聖地として広く認知されるようになった中野が、今春からキリン本社ビルや早稲田大など3大学の移転もあって注目を集めるなど中央線沿線エリアの人気も再燃している。都心に近いながらも物価が安く暮らしやすい点は言うまでもないが、やはり、住む土地に個性的な文化を求める傾向がより強くなっているとも言えるだろう。
「住みたい街No.1」吉祥寺を長年根城にし、都内カフェ歩きの達人でもある、歌人の桝野浩一氏が話す。
「10年以上住んだ吉祥寺を昨年ようやく引っ越したのですが、私は生まれも隣の西荻窪ですし、今は阿佐ヶ谷の仕事場を『枡野書店』という小さな店にしており、どうしても中央線沿線が落ち着くというのはあります。代官山や中目黒あたりは、落ち着く風情の店であっても、どうも落ち着きません。お洒落な古書店とかカフェとか、いちいち値段が高すぎる印象があります。単純に『お金を使わなくても楽しめる街』の楽しさを人々が自覚するほど、皆が都会的になったということなのかな、と思っています」
移りゆく時代とともに住みたい街に対する意識も少しずつ変わっていくということなのか。冒頭で触れた、先頃2013年版『住みたい街ランキング』を発表したSUUMO編集部の担当者が、「再開発」というキーワードとともに将来的に人気が集まりそうな街についてこう予見してくれた。
「今回のSUUMOのランキングを見ると、大規模再開発が進んでいる武蔵小杉が12位、豊洲が27位にランクインしているのは、変化と言えます。8位の品川も、利便性に加え、再開発が進んだことの影響もあると思います。湾岸で開発が進んでいる豊洲が今年27位にランクインしましたが、今後も湾岸では大規模マンションが続々と登場しますので、豊洲、晴海、新豊洲、東雲など湾岸系の街には注目でしょう」
近い将来、吉祥寺から「住みたい街No.1」の称号を奪い取るのはどの街なのだろうか。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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