苦境のコンデジ、頼みは「スマホの補完」能力
―[コンデジ業界の生きる道]―
スマホの登場以来、縮小傾向にあるといわれ続けているコンデジ市場。お手軽かつ、十分な画質で撮れるスマホに対抗する術はあるのか? メーカー各社の工夫を探る。
◆保存・共有に強いスマホを補うコンデジが生き残る
7月にカシオから発売された“自分撮りデジカメ”「EXILIM TR15」が発売からわずか2週間で完売した。自分撮りならばスマホで事足りそうだが、アジア圏では日本以上に「自分撮り」のニーズが高く、そちらでのヒットが要因だった。香港のモデルがネットにアップして以来、アジア圏の若い女性の間でこの機種が大ブームとなっているのだ。
だが、日本では依然として、写真はスマホ派が増え続け、コンデジ市場は縮小する一方。そんななかで各メーカーはどんな生き残り戦略を図っているのか? 業界事情に詳しいデジタル系ライターの荻窪圭氏はこう語る。
「コンデジには廉価版、普及型、ハイエンドの3種類があります。1万円程度で画質も悪く、コンデジの最下層にいるのが廉価版。これは今のスマホの画質とほぼ大差ないレベルのため、安さ第一のごく少数に向けてしか作られていません。ハイエンドは逆にミラーレスや一眼レフに届くくらいの画質のいいもの。4万~5万円と高価なため、多くは売れませんが、実はこのタイプは昔よりも伸びています。スマホの普及で、写真に興味を持つ人口は増えているんですよ。そういった人が一眼レフに挑戦する前のステップとして、ミラーレスよりも軽量でレンズ交換もないハイエンドに挑戦しています」
しかし、廉価版とハイエンドの間の2万~3万円の「普及型」が苦境に立たされているため、ハイエンドが売れていても全体としてはやはり売り上げが落ちているという。
⇒【図解】「コンデジ市場」の遍歴 https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=501181
「カメラには“表現”“記録”“コミュニケーション”の3つの役割があります。“表現”を担うのは質の高い写真を撮れる一眼レフ。そして、行事などの日々の“記録”はかつては普及型コンデジの役割で、“コミュニケーション”はより手軽な携帯写真が担っていました。それがスマホとSNSの普及により、“記録”と“コミュニケーション”がスマホ一台で事足りるようになったんですね。しかもスマホはコンデジよりも共有や保存に優れ、PCを開く手間もいらない。これで一気にコンデジの存在意義が薄れてしまいました」
そこで、生き残るためにとっている戦略だが、スマホに対抗して戦うよりも、お互いの足りない部分を補い合っているものがほとんどだそう。
「スマホは普段必ず持ち歩くものだから、戦っても無駄なんです。一時期はやったタッチパネル式のコンデジも、スマホと比べられてしまうため、市場から消えました。保存と公開の得意なスマホと連係プレーをするためにWi-Fi機能を搭載し、そのうえで望遠や防水などコンデジでしかできない部分で勝負するのが今の戦略の特徴。ただ、Wi-Fi機能もスイッチを入れ、スマホアプリを立ち上げ、と面倒が多いので、このストレスをいかに排除できるかも生き残りの重要なポイントです」
⇒【次回】「コンデジ業界、生き残りのための3つの戦略」https://nikkan-spa.jp/501175 【荻窪 圭氏】 デジタル系ライター。『ASCII.jp』で連載中。『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社)ほか、著書多数 取材・文/朝井麻由美 ― コンデジ業界の生きる道【1】 ―
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