更新日:2013年12月05日 20:39
仕事

末期ガンに立ち向かう40歳会社員「サラリーマンという組織の力が支えてくれている」

働き盛りのサラリーマンに突如、降りかかった不治の病。生命保険には未加入、3000万円の家のローン、小さい子供を残して死にきれるのか?そんなケースから考える、資金繰りの方法、休職の仕方などを考えてみる! ◆[密着ドキュメント]末期ガン宣告された40歳会社員が、死に際に準備しておくこと【後編】(取材・文/中川淳一郎) ⇒【前編】はコチラ ●堂島二郎氏(仮名・40歳) 大阪の某広告代理店に勤める部長職。鼻腔のガンの末期。専業主婦の妻と2歳と5歳の子供を持つ。中川氏と’11年5月に初めて大阪で会い、たった7分間で意気投合した仲。生粋の広告マンで、仕事の虫である彼は視力を維持して早死にすることを選択した ◆314万円の治療費、貯金8万円では死にきれない  腺様嚢胞ガンの5年生存率は約70%だが、極めて転移しやすく、10年後の生存率は49%。治療法も高度で、完治も難しいと言われるガンだ。告知後の心境を堂島氏はこう語る。 「昨日までピンピンしていた人間に、“余命”というタイマーがセットされたのはショックだった。しかも、親戚縁者にもガン患者はいないのになんでオレなんだと。この世に神様なんていないと思ったね。同時に、家族の顔が浮かび、なぜか昔の彼女の顔も……。会社の引き出しに隠している元カノの写真は死んだら部下に捨ててもらわなきゃ、なんてことも……」  しかし、絶望してもカネが稼げるわけでもない。当面はどうやって生活費や治療費を確保するかが重要になってきたのだ。  堂島氏の場合、先進医療である重粒子線治療を施す必要があり、これに約300万円が必要になる。しかし悪いことに、生命保険には未加入。しかも3000万円の一戸建てを25年ローンで購入したばかりで、頭金ですっからかん。なおかつ、若い頃に散財したこともあり、蓄えがほとんどなかったのだ。残高は約8万円しかなく、他の貯金をかき集めても42万円ほどしか手許に残っていなかった。  しかし、ここで堂島氏は社畜の恩恵を受けることになる。まず、「三大疾病」に罹患したことで、会社からは一時見舞金60万円が支払われた。入院中、社会保険からは疾病手当として給料の3分の2が支払われるが、それでも十分ではない……。
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同僚から送られたお守りの数々。同僚は金銭面でも精神面でも支えとなってくれているとか

 しかし、ここからは人徳がモノを言った。宴会があれば率先して幹事を引き受け、部下が困っていたら何かと声をかけていた堂島氏。それゆえ、社内では自発的に見舞金が集まり、その額は70万円に達した。全国で約300人の従業員がいる会社だが、この額は簡単に集まるものではない。堂島氏は改めてサラリーマンという組織の力を感じたという。 「俺がいないのにうまくいっているのが悔しいけど、現在、仕事は部下が引き継いでくれているし、金銭面でも退職金の前借りもでき、治療費や子供の養育費に充てることができた。これまでは仲間と『所詮、サラリーマンだから』と皮肉っぽく言ってたけど、今は多くの仲間が経済的にも精神的にも支えてくれている。でも、俺がガンから生還したら、今度は自分が『冠婚葬祭ディレクター』的立場になって、音頭を取り続けなきゃいけないんだろうなと、余計なプレッシャーも感じていますけどね(笑)」  堂島氏はこれからすぐ「重粒子線治療」という、全国で4か所ある医療センターでしか受けられない治療に入る。ガンの事実を知らない子供たちには「ちょっと入院するだけ」と伝えている。そんなシビアな状況を間近に、意外と楽観的なのだ。 「今、入院している専門病院では患者の年齢層が高くて、俺は完全に小僧扱いだからね。ゼロ戦に乗っていたという爺さんとかと毎日話をしているけど、連日相手するのと、『若いのに……』とか言われるのが、治療より大変ですよ(笑)」  そんなことをオレに愚痴りつつ、「病院では“根付く”といって鉢植えはタブーらしいけど、花は枯れると寂しいから、サボテンとか盆栽のほうが絶対いいことを発見した。これ、どこかで書いておいてよ」と広告マンらしいことを言うのだ。彼の教訓はしかと受け取り、読者に伝えたいオレである。 ◆40代会社員の給与事情(DODA、金融広報中央委員会調べ) ●平均年収:608万円 ●平均貯蓄額:698万円 転職支援サービスDODAの「平均年収調査・2012」では、40代正社員の平均年収は608万円。50代になると、平均は754万円と一気にアップする。サラリーマンは40代後半から役職につくなどして、給与がピークを迎えるのだ。サラリーマンは40歳からがオイシイ、といってもいいだろう。また、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(’12年)の「2人以上で暮らす家庭の平均貯蓄額」によると、40代で金融資産を持っている人の平均値は962万円。データを小さい順に並べたときに“真ん中”にくる「中央値」では640万円となっている。40代、家庭を持っている人ならば600万円くらいは貯蓄に持っておきたいものだが…… ― 末期ガン宣告された40歳会社員が、死に際に準備しておくこと【2】 ―
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