『犬のクソはあえて踏め』という生き方
―[オレだけの[座右の銘]大事典]―
近頃やたら目につく名言本。この混迷の時代、やはり指針となる言葉が必要とされているのか。そこで、著名人から一般人まで、自らの経験に学んだり先輩から受け継いだ「自分だけの座右の銘」を集めてみた。仕事、恋愛、人間関係など、いろんな場面で役に立つはず!
◆[生き方]編
すでに耳タコな座右の銘も、解釈ひとつでまた別の教訓が。
「『捕らぬ狸の皮算用』って、おバカなヤツみたいな意味で使われているけど、私は宝くじを買ったら『当たったら何に使おうかな』、合コン前には『素敵な人に出会えるかも』なんて妄想し、幸せ気分に浸ります。どうせ当たらない、いい男なんて来ないとネガティブでいるより、前向きでいるほうが本当に幸せを掴める気がする」(33歳・女・出版)って、確かに前向きなのは大事。とはいえ、前のめりになりすぎてしまうのも考えもの……ということではコレ。
「『まぁまぁそこそこ適当に』。頑張りすぎてもダメだし、頑張らないのもダメ。ダッシュで生きてもどこかで息切れする。自分のペースで、ゆっくりでも走り続けないと。『適当』は悪い意味じゃなく、物事にマッチしているということ」(50歳・主婦)って、手抜き家事の言い訳……ではないよね?
一方、耳を疑うのはこちら。
「犬のクソはあえて踏め」(26歳・男・会社員)って、どういうこっちゃ!? 「自分で考えた言葉なんだけど、一人の人間なんてクソくらいの価値しかないと思うんですよ。誰も一人では生きていけない。必ず誰かに支えてもらいながら生きているのに、ちょっとうまくいくとすぐ『自分は偉い』『自分には才能がある』などと考えがち。でも、うまくいったのは周りの助けがあったからなんですよ。だから、犬のクソでも踏んで“ダメな自分”を思い返せということ。リアルに踏んだりはしないけど、代わりに犬のクソを見つけたら凝視するようにしています」とは、犬の糞を見て戒めとするワケね。
糞が教訓になるくらいだから、博打なんて教訓になりまくりだ。
「『運の袋は破けてる』。人は誰しも『運の袋』を持っていて、それを毎日小出しに使っているんだ。たとえば万馬券に当たったりすると運の袋は空っぽになるから、その日はおとなしく帰るのが正解。次のレースに賭けたりすると必ず負けるよ。そもそも運の袋は脆いから、その日の気分とかちょっとしたことで破れてしまう。それに気づかずあれこれ手を出してしまうから失敗するんだ。だから、定期的に袋の状態をチェックすることが重要。俺はふいにコインを投げて、裏表が当てられるか確認しているよ」(66歳・男・会社経営)って、何だかちょっと面倒くさいすね。つか、そこで裏表を当てまくったりしたら、せっかくの運を使ってしまう気が……。
その点、「とりあえず食って寝る」(40歳・女・派遣)てのはわかりやすい。「ヘコんだり腹が立ったときにはこの言葉を思い出して実行。気分転換になるし、時間を置いて冷静にもなれる。何よりごはんが食べられて、寝られる自分はまだ大丈夫と思える」。
食べる系では「太るときは空気でも太る」(34歳・女・ウェブ制作)てな言葉も。「運動したり食事に気を使ったりして頑張ってみても、太るときはどうしても太る。転じて、ある程度やってダメなら、あまり深く考え込まず、ひとまず様子を見ればいいじゃん……みたいな意味」とか。単なるダイエットの悩み吐露かと思いきや、意外に深い意味があったのね。
と、感心したそばから「座右の銘なんて持たない」(38歳・男・ウェブ制作)という座右の銘が。
「クソみたいなポリシーとか、安っぽい自意識なんてゴミ箱に捨ててしまえ。座右の銘を自慢げにアピールするヒマがあるなら、黙って仕事しろ。自己演出ウゼェ、という意味。まあ、そもそもこれ自体が座右の銘になっているわけだから、矛盾してるんだけどさ」
時に人を励まし、時に翻弄する座右の銘の魔力がチト怖い!?
イラスト/坂本千明
― オレだけの[座右の銘]大事典【3】 ―
この特集の前回記事
ハッシュタグ