ホームレスが意外と高収入!?の理由
多摩川沿いに立ち並ぶ路上生活者のテントや小屋のなかには、自家発電機やアンテナなどが設置されている建物が散見される。なかには、インターフォンを取り付けているところもあれば、和室の部屋に液晶テレビや冷蔵庫などを完備した家もある。傍から見ても、彼らの生活水準に達するにはある程度の収入が求められるのは想像に難くない。多摩川沿いに居を構え12年目になる40代ホームレス・久保直樹(仮名)さんは自身の収入源について次のように話す。
「月曜日から土曜日の週6で朝6時くらいからごみ捨て場を回ってお宝を探しています。主な収入源は、アルミ缶、アダプターの中にある銅線、そして自転車ですね。自転車は解体して部品として買い取ってもらいます。これだけで月収は10万円前後にはなりますよ。あと今、狙っているのはスマホ。1台7000円前後で買い取ってもらえる。逆に買い取り価格が下がったのはノートパソコン。WindowsXPのサポートが終了しちゃったからね。以前は1台3000円だったのが、今ではたったの700円ですよ」
久保さんの家では、秋葉原で購入したソーラーパネルを使って発電をしている。自炊に使うガスはカセットコンロを利用し、水道は近くの水飲み場から汲んでくるという。水道光熱費はゼロに近く、久保さんは月の稼ぎのほとんどを自由に使えるそうだ。では、その使い道は?
「たばこと食費で全部すっ飛びますよ。ファストフードやコンビニのお弁当は食べないですね。肉も滅多に食べないですし、もちろんお酒もやらない。体に毒ですからね。えっ、たばこ……!? これは相棒みたいなもんだから勘弁してよ(笑)。で、最近ハマっている夕食は、鶏肉でとった出し汁で野菜を湯がいてゆずポン酢でいただくこと。鶏肉は食べずに捨てますけどね。あくまで出汁用。もう、これが絶品なんですわ」
肉を捨てて野菜だけを食べる。なんとも贅沢な食事である。続いて、買い出しを終え、帰宅途中の60代ホームレス・石井和典さん(仮名)に話を伺うことができた。ホームレス歴は13年目になるという。「これからホームレス仲間と飲み会でね」と言うように、スーパーの袋の中は、辛子明太子、1.5リットルのペットボトルジュース2本、缶ビール7本、そしておつまみ少々といった具合だ。懐が温かくなると飲み会を開くという石井さんの年収は、なんと300万円近い。
「ごみの回収日に合わせてごみ捨て場を回るのは他のホームレスと一緒です。ただ気をつけていることがいくつかあります。まずはごみ捨て場に行く時間。早く行き過ぎると少量のごみしか捨てられていませんし、遅すぎると他のホームレスに先を越されてしまう。またファミリー層が多いのか、独身の社会人が多いのかによってもごみが集まってくる時間帯は違います。この辺りはどうしても経験がモノを言いますね」
次に気をつけているのが、訪れるエリアなのだとか。
「例えば田園調布。昔ながらのお金持ちが住んでいる地域なので、さぞかしお宝が眠っているかと思いきや、お金になるごみには滅多に遭遇しません。本当のお金持ちって堅実なんでしょうね。逆に狙うべきエリアは、馬込近辺の新興住宅地域や、中流階級より少し所得が低い人が多く住んでいる川崎市の幸区あたりかな。消費癖がついている人や成金体質の人が多いから、貴金属とか平気で捨てちゃう。運が良ければ金(ゴールド)とかブランド物の指輪や時計とかをゲットできることもある。まあ稀ですけど、月収80万円くらいになったときもあったかな。あとは、専用のごみ捨て場を設けているマンション。回収日に関係なく住民はごみを捨てるからね。こういうマンションを見つけたら、ごみ捨て場を管理している人と仲良くなるように心がけていますよ。特別にカギを開けてくれて、中を見せてくれることもありますからね」
ごみをお金に換えるのには、お金の匂いを嗅ぎつける嗅覚が必要なのだそう。ただごみを拾えばいいというものではない。嗅覚がすぐれているかどうか、それがホームレスの武器となるようだ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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