毎日、80億ベクレルの汚染水を放出するしかない現状【汚染水処理の現在 vol.2】
10月21日から1号機の建屋カバーの解体に向けた作業を開始した福島第一原発。だが、廃炉に向けた作業は難航。毎日、80億ベクレルの汚染水を垂れ流しているといわれている。どうにもならない汚染水の現状を、SPA!が独占取材!
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◆毎日、80億ベクレルの汚染水を放出するしかない現状……。
今回公開されたのが、この第2段目の汚染水から、ストロンチウムのみを取り除くモバイル・ストロンチウム除去装置や多核種除去設備(ALPS)。ALPSは、汚染水に残されたストロンチウムを含む62種類の放射性物質を一度に告示濃度限度以下まで取り除けるというもので、東電が東芝とともに開発したものが既に3系統あるが、今回公開されたのは増設した既存型ALPSと高性能型ALPS。高性能型ALPSは1系統の処理能力は既存型の2系統分、処理に伴い発生する廃棄物量は9割削減できる。それが福島第一原発の小野明所長の「豪語」の根拠でもある。
だが、これらを投入しても大きな前進につながらないと噂されるのはなぜか? 今回の公開も含め合計4回の福島第一原発報道公開に参加したフリージャーナリストの村上和巳氏は次のように語る。
「そもそも既存型ALPSは試運転開始以来、トラブル続きで何度も停止しています。今春には使用しているフィルターが放射性物質による劣化で亀裂が入っていたことがわかり運転を停止。新材質のフィルターに交換し、試運転を再開したばかりだったのですが、またもフィルターに亀裂が発生し、結局再び試運転は一部停止したほどです。過去に例のないことに取り組んでいることを割り引いても、高性能型ALPSなどで汚染水処理が一気に進展することに確信が持てないのが現状です」
小野所長が掲げる来年3月末までの汚染水処理は、安倍首相が福島第一原発を視察した際に東電の廣瀬直己社長が公約したものである。ところが、この公約が通り、汚染水のリスクは低減できても問題は山積だという。村上氏が続ける。
「ALPSでは最終的に除去できない放射性物質のトリチウムが残ります。東電はトリチウムから出る放射線レベルは低く、人体への有害性は少ないとして当初はALPS処理後のトリチウムが残った水を地元の同意が得られれば海に放出する計画でした。ところが原子力規制委員会がこれに待ったをかけたため、ALPS処理後の水もタンクで保管することになっています」
⇒【vol.3】「規定通りに進んでも放出に20年近くかかる」に続く
取材・文/SPA!原発問題取材班 取材協力/村上和巳
― 福島第一原発「汚染水が限界を超えている!」【2】 ―
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