話題のビアレストランから見えるクラフトビールの未来
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昨年、赤坂にオープンした1号店は既に同エリアの人気店となっており、満を持して激戦区へ殴り込みをかける格好だ。
「クラフトビールに詳しくない人の間でもコンビニやスーパーにも流通する「よなよなエール」(ヤッホーの代表商品)は認知度が高いですからね。他店の店主の間でもクラフトビールファンが増えて、街が盛り上がってくれることを期待する声は大きい」(クラフトビールに詳しい飲食コンサルタント)という。
ヤッホーといえば、90年代半ばの地ビールブームからブーム終焉後、“冬の時代”を経験しながら、創業当時の楽天市場にいち早く着目し、今やマーケティングの主流であるネットやSNSを駆使したPR戦略によって通信販売をメインに業績を伸ばしてきた。大手4社(アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー)にアサヒ傘下のオリオンを加えた5社によるビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)の生産量が90%以上の占有率を誇る国内シェアにおいて全体の1%にも満たないものの、昨年、キリンと業務提携を結び生産体制を強化し、一般市場における販路を拡大。ローソンやAmazon専売の限定ビールを瞬く間に売り切るなど、クラフトビールメーカーの中でも頭ひとつ抜け出した存在となりつつある。
クラフトビールブームに大手も注目している。とりわけ昨年、ヤッホーとの提携で業界を驚かせたキリンはクラフトビール事業にはとくに熱心だ。昨年度、大手4社で唯一、ビール系飲料の出荷量が前年割れ。シェアでもトップ争いを繰り広げてきたアサヒビールの38.2%に33.2%と水を開けられており、クラフトビールを巻き返しの起爆剤にしたいと考えているようである。
そんなキリンが4月17日、東京・代官山にオープンする醸造所併設のビアレストラン「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO」(スプリングバレーブルワリー東京)が注目を集めている。
通年で6種類ほか、スポットでオリジナルのクラフトビールを展開、併設された醸造施設はガラス張りになっており、醸造工程を見学しながら造りたてのクラフトビールが楽しめるのが特徴だ。また独自開発した高機能サーバー「ビアインフューザー」によってホップやフルーツ、コーヒーなどのフレーバーを抽出してビールに一味加えるような今までにはないサービスを提供する。
従来のビアレストランとは一線を画す洗練されたインテリア、スタッフのコスチュームは、クラフトビールファンだけでなく一般層への訴求も強く意識していることが伺える。
ライバルのサッポロ、アサヒもクラフトビール参入を表明する中、キリンは「2020年のクラフトビールシェア1位を目指す」(スプリングバレーブルワリー社長・和田徹氏)という。一方、大手でも静観の構えをとるのが、好調「プレミアムモルツ」で過去最大のシェア15%を獲得したサントリー。サントリーホールディングスの新浪剛史社長は「クラフトビールはその地域で作らなければ意味がないのではないか」と大手がクラフトビールを手掛けることへ疑問を投げかけている。
前出の飲食コンサルタントは言う。
「ビールの苦手な人、特に女性は炭酸の強さを好まない理由に挙げる人が多いのですが、クラフトビールは従来の国産ビールと比べて炭酸が弱く、フレーバーも果実味やスイーツを感じさせるような女性好みの銘柄もあります。男の酒だったウイスキーは炭酸で割ったハイボールによって新たな市場を開拓しました。クラフトビールがシュリンクを続けるビール市場に新しいユーザー連れてくることは十分に期待できると思います。しかし一方で昔からのクラフトビールファンはどちらかといえば、万人受けしづらい強烈な苦味であったり、ビールそのものの希少性などに価値を見出す傾向が強い。マス向けにチューニングされたクラフトビールを支持するかは微妙です。クラフトビールユーザーは今後、従来からのコア層と新規参入のライト層に二分されていくかもしれませんね」
クラフトビールが新しいアルコールジャンルとして定着するか否か。インディーズの雄・ヤッホーとメジャーの巨頭・キリンが果たす役割は大きい。
<取材・文/大澤昭人(本誌) 撮影/難波雄史>
小規模メーカーが造る個性的な味のビール、いわゆる「クラフトビール」の人気が高まる中、クラフトビールを提供する飲食店もここ1年ほどで急増している。中でも激戦区として知られるのがブーム前夜から専門店が複数出店している東京・神田。そこへクラフトビールメーカー最大手「ヤッホーブルーイング」の公式ビアレストラン「よなよな BEER KITCHEN 神田店」がオープンした。
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