「著作権の非親告罪化」で日本から新曲が消える!?
今年、アメリカで音楽著作権のあり方をめぐる大論争が勃発した。ロビン・シックの世界的ヒット曲「ブラード・ラインズ」がR&Bの大御所、マーヴィン・ゲイの楽曲の盗作であるとして、ゲイの遺族が告訴。訴えが認められ、約9億円の支払いを命じられたのだ。
問題は告訴の理由だ。従来の音楽著作権をめぐる裁判では歌詞やメロディの類似が争点になってきたが、ゲイの遺族は「曲のフィーリング(雰囲気)が似ている」という驚きの理由で告訴に踏み切り、勝訴してしまったのだ。
著作権問題に詳しい、弁護士の福井健策氏はこう語る。
「主観的な『同じ曲のように聞こえる』ことを根拠に著作権違反が認められたのは、かなり踏み込んだ判決でしょう。これは著作権のあり方そのものが問われる、非常に大きな問題だと思います」
そこに現在交渉中のTPPで議論されている「著作権の非親告罪化」が追い打ちをかけるという。
「非親告罪化の問題は処罰に権利者の訴えを必要としないところ。今回は遺族からの訴えでしたが、ネット上で『これはパクリだ』と騒動になり、『なぜ犯罪者を放置するのか』とクレームが入れば警察も捜査せざるを得ない。しかも音楽は世界中に膨大なアーカイブがあり、ネットで探せばほぼ確実に似ている曲は見つかる。悪意を持った人が権利者を貶めるために騒ぎ立てることだってできるわけです。『似ている』ことが著作権違反の根拠として成立するなかで非親告罪化が認められれば、クリエイターは間違いなく萎縮する。文化にとって大きな打撃です」
あらゆる創作は先人の遺産のもとに成り立つもの。「パクリ」と騒ぐのもほどほどにしないと、やがて日本から新曲が消えてしまうことになるかもしれない。
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