ラグビー日本代表の強さは「柔能く剛を制す精神」だけじゃなかった
ラグビーのW杯で南アフリカを破り「史上最大の番狂わせ」(英BBC電子版)を演じた日本代表。エディー・ジョーンズ監督の提唱する「ジャパンウェイ」は“柔能く剛を制す精神”と一線を画するものだとスポーツライターの大島和人氏は解説する。
「GPSやドローンで選手たちのデータを計測した結果、今まで日本の強みとされていた俊敏性・連係は必ずしも強みではなかったそうです。それもあってフィジカルやコンタクトプレーへのこだわりが強まりました。なかでも、総合格闘家の高阪剛氏を招聘するなど、チームに80分間続けられる“ロータックルの文化”を根付かせたことが大きいと思います。低い姿勢は試合を通してはなかなか取り続けられないもの。実戦的な体づくりを進め、体勢の立て直しの速さや、重心移動といった動作を、ロジックを含めて丁寧に植え付けたことがエディー・ジョーンズ監督とスタッフのスゴさです」
柔の部分ばかりが強調されるのは、組織力によるパス回しが「自分たちのサッカー」だというサッカーも同じかもしれない。
「ボールを動かすことへのこだわり、緻密さならばメキシコ代表、バルセロナなどのほうが断然上で、『これぞ日本流!』と言える特徴ではありません。重心移動の鋭さ、反応の速さは日本の強みだと思いますが、そこを生かすためにはフィジカル、ラグビーのような“体の使い方”を突き詰めなければいけないと思います」
体格や身体能力で勝る外国に、小技や組織力で対抗する日本といった構図はメディアなどでおなじみだが、そう単純な話ではない。
「やっぱりDFは物理的な高さや大きさが生きる部分があります。正面からぶつかるぞという“剛”の心構えも重要です。また正しい間合いでの体の使い方や反応の速さ、球際の強さは特に磨かなければならない。そういう広い意味でのフィジカルは重要です。現在のハリルホジッチ代表監督も、ただ選手の体脂肪を気にしているだけでなく、“デュアル”という言葉で球際の戦いを強調していますよね」
柔だけではなく、剛をもって剛を制すことも重要なのだ。
★単純なテクニックやフィジカルではなく強さの要因は複合的
【大島和人氏】
『エルゴラッソ』などのサッカー専門誌に寄稿。そのほか、野球、ラグビー、バスケット、バレーの現場にも足を運び、ラーメンにも精通する自称“球技ライター”
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