一泊1700円の簡易宿泊所“ジブリハウス”に泊まってみた
東京の山谷といえば大阪の西成や横浜の寿町と並ぶ、日雇い労働者たちの街として有名だ。
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唯一、設備らしい設備はテレビだが、ご主人は執拗にその受信状態を気にしており、リモコン一つひとつのボタンがそれぞれどのテレビ局に割り当てられているか、きちんと映るか、延々と二人で確認し合う謎の作業が続く。氏名や本籍地住所などを書き宿泊料を払うと、ご主人は去っていった。
その日は29名が宿泊中ということだったが、建物は驚くほど静か。アコーディオンカーテンで仕切られただけの部屋なのに、物音といえば時折、誰かが咳き込んだり、何やら独り言らしい呟きが聞こえる程度。
部屋の照明はくすんだ明かりを放つ一本の蛍光灯のみで、廊下も薄暗く、鬱々とした雰囲気を醸し出している。やがて、あちらこちらから聞こえ始めたイビキに誘われるまま、まだ早い時間にも関わらずついウトウトしてしまった。
しかし、この宿、深夜0時を過ぎても夜勤のおっちゃんや、新聞配達に赴く人たちもいるため、けっこう人の出入りが激しい。木造の廊下はどうしても足音が響いてしまうこともあって、ついに熟睡感を得られないまま朝を迎えてしまう。
◆住み着く宿泊客
山谷エリアに数多く存在する格安の簡易宿泊所は労働者だけではなく、旅慣れた海外からのバックパッカーや長期滞在の観光客の利用が増加している(海外の安宿街に比べ比較的治安が良いこと、アクセスの良さなどが理由だそうだ)。
“ジブリハウス”では外国人観光客に出会わなかったが、ご主人曰く、宿泊者のほとんどは住み着いてしまっているような状態で、季節を問わず2・3部屋は常に空いているそうだ。
利用する際は「安かろう悪かろう」の割り切りスタイルで。念のためダニ対策も忘れぬようにしたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
高度経済成長を下支えしてきた労働者たちも、近年は高齢化が進み、かつての活気は失われて治安もだいぶ良くなった。とはいえ、まだまだドヤ街としての雰囲気は色濃く残っており、仕事にあぶれたおっちゃんたちが朝から地べたに座り込んで酒盛りをする光景が今でも見受けられる。
そんな山谷で近所の人たちから、“ジブリハウス”と呼ばれている有名な簡易宿泊所があるという情報を得て、実際に一泊してみた。南千住駅徒歩5分という好立地にもかかわらず、一泊(24時間滞在可能)1700円と、山谷のドヤ(宿)の中でも割安のこの宿。異様なのはその外観だ。建物全体が鬱蒼と茂ったツタに覆われており、錯覚かもしれないが建物自体、少し傾いているようにも見える。
◆新しいシーツに取り替えたばかりの部屋を案内される
尻込みしながらも建て付けの悪い引き戸をこじ開け、建物に一歩足を踏み入れると、強烈なカビの臭いが鼻を突く。入り口で人を呼ぶと、60代くらいの小太りのご主人が奥から顔を出した。想像したよりも人当たりの良い人で、初めて利用する取材班に「新しいシーツに取り替えたばかり」という部屋を割り当ててくれる。
ツタに遮られ外からはわからなかったが、建物は木造二階建てで、一つの階を上下二段に仕切りそれぞれをひと部屋としている。ひと部屋の天井の高さは2メートル足らず。広さは三畳でペラペラの布団とテレビ、窓が一つあるのみで冷暖房はない。
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