「生き抜く覚悟」と「平和の尊さ」を学べる平和祈念展示資料館(3)――物資不足の中で軍服は……

陸軍の兵士が着た軍服(写真提供=同館)

 この資料館の工夫については前回記述したが、それに関連する工夫の一つに『見学ノート』がある。これはA4判24ページのオールカラーの冊子で、校外学習活動の一環として全国からこの資料館を訪れる中学校を中心とした多くの生徒に、無料配布されているものだ。

 このノートの初めの方に、「体験者の『ことば』をさがしながら展示を見ていきましょう」といページがあり、展示解説などで印象に残った言葉を書き込めるようになっている。

 今の中学生の親世代は戦争体験がなく、さらにその上の祖父母世代もほとんどないといってよいだろう。家庭で戦争の体験談を聞く機会がない中学生にとって、印象に残った言葉を書き込みながら展示を見ていくのは、前回記したように当時の雰囲気を感じ取る上で大事であり、さらに展示の着眼ポイントが分かるように上手く編集されている。

「千人力」の日の丸と千人針に託された思い


 さて、兵士コーナーでまず目についたのは、赤紙(臨時召集令状)である。
 戦前の大日本帝国憲法では、「兵役の義務」が規定されており、成年男子は徴兵検査を受けて兵士になる法律があった。この赤紙は、戦争で多くの兵士が必要になった際に、徴兵検査で合格した男性を招集するための命令書であり、その紙が赤かったことからその通称がついた。この赤紙を持って、決められた日時に、指定の部隊に行くことになる。

 その時の心境は、どうであったのか。「お国のためだから」と覚悟を決め、戦地に赴いた人も多かったのであろう。他方、送り出す家族の思いはどうだったか。

「千人力」の日の丸(写真提供=同館)

 「千人力」の日の丸や、千人針が展示されている(左側の上段と下段の写真)。この千人針は、木綿の布に千人の女性たちが、赤い糸で一針ずつ玉留(たまどめ)を縫ったものであり、玉留は、「鉄砲の弾(たま)をとめる」という験(げん)を担いだものだ。

 図柄が虎なのは、「一夜にして千里を行き千里を帰る」という伝承にあやかっている。鼻先と腹のところに縫いこまれているのは五銭硬貨であり、これは「四銭(死線)を超える」という願いが込められている。

千人針(写真提供=同館)

 出征する男子は、親にとっては息子であり、姉にとっては弟であり、妹からは兄という存在だ。近隣の人々の協力も得て、戦地での無事を祈り縫っていった。出征兵士は、無事に生還することを願いこれを身につけた。

 また、「陸軍の兵士が着た軍服」(冒頭の写真)も展示されている。

 左側は昭和14年に、右側は19年作られたものだ。並んで展示されているので、物資不足のために、右側の軍服の素材や作り方が悪くなっているのが分かる。おそらく、せめて立派な軍服を着せて戦地に行かせたいと思っていた関係者の気持ちが伝わる。(続く)

(取材・文=育鵬社編集部M)




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