【連載小説 江上剛】 一緒に、墓に入ろう。Vol.2

夜「遅かったわね」 水原麗子は、俊哉をなじった。 「ごめん、ごめん、経営会議が長引いてね。イライラしたんだけどさ、途中で退席するわけにいかないじゃん」 俊哉は、子供っぽい口調になり、麗子の額に唇をつけた。 麗子は、額に俊哉の唇を受けると、今度は顔を突き出して唇を突き出した。 「はい、はい」 俊哉は、麗子の要求を理解して自分の唇を麗子の唇に重ねた。 コートは脱いでいるが、スーツはまだだ。俊哉は、スーツ越しに麗子の柔らかい胸の膨らみを感じていた。 麗子は、唇を離すと、両手を俊哉の首に回して「はい、は一回でいいのよ。二回も繰り返すと、いやいやみたいじゃないの」と頬をぷっと膨らませた。 「セクシーだな」 俊哉は麗子の部屋着を眺めた。まるでキャミソールのような薄い生地で作られている。パンツは、太腿の部分に膨らみのあるブルーマーのような形状だ。とても四〇歳とは思えない。 「そう? 嬉しいわ。部屋の中は暖かいしさ、せっかく俊哉さんの誕生日を祝おうと思っているのにごわごわの厚手の服より、すぐに脱げる方がいいと思って……」 麗子は、くすりと笑った。えくぼが見える。もともと少し目と目の間が離れた感じの平べったい、とぼけた味のある顔立ちだ。四〇歳になったとはいえ、子供っぽい。大げさなことを言えば格好次第では高校生に見えないことはない。小柄ながら胸や尻などの肉は柔らかく厚みがあり、エロスの香りを充分に漂わせている。 「私はどうしてこんないい加減な男が好きなんだろうね」麗子は、体を離す。「さあ、食事にしましょうか。その前に俊哉さんも着替える?」 「いいや。上着だけ脱ぐよ。まずは、腹ごしらえだ」 俊哉は、スーツの上着を脱ぎ、手渡す。麗子は、それを丁寧にハンガーにかける。 <続く> 江上剛作家。1954年、兵庫県生まれ。77年、早稲田大学政治経済学部卒業。第一勧業(現みずほ)銀行に入行し、2003年の退行まで、梅田支店を皮切りに、本部企画・人事関係部門を経て、高田馬場、築地各支店長を務めた。97年に発覚した第一勧銀の総会屋利益供与事件では、広報部次長として混乱収拾とコンプライアンス体制確立に尽力、映画化もされた高杉良の小説『呪縛 金融腐蝕列島II』のモデルとなる。銀行在職中の2002年、『非情銀行』でデビュー、以後、金融界・ビジネス界を舞台にした小説を次々に発表、メディアへの出演も多い。著書に『起死回生』『腐食の王国』『円満退社』『座礁』『不当買収』『背徳経営』『渇水都市』など多数。フジテレビ「みんなのニュース」にレギュラーコメンテーターとして出演中(水~金曜日)
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