朝鮮半島の有事を救う【岡崎久彦大使の安全保障論】(6)――刀を抜かずして事が収まる方策は

平成24(2012)年11月、瑞宝重光章を受章した岡崎大使

 前掲の『国際情勢判断・半世紀』で、岡崎大使はこう語っている。

(先の大戦の敗戦直後)父の友人が自宅に来ては、自由闊達に議論していました。……誰かが「米英に対する復讐戦まで何年かかると思う」と聞きました。それに対して客の一人が……「それをしては絶対にいけない。ドイツを見ろ。二度立ち向かってやられている。だからアングロサクソンと仲良くする以外にない」と答えました。私はそのとき議論を横で聞いているだけでしたが、日本の進路に関する大きな二つの立場を代表する発言であることは旧制中学校三年生の私でもよく分かりました。……(後者の)発言は胸に響きました。それ以来、私はアングロサクソンとの同盟論の立場です。(同書、32ページ)

 さらに、日米同盟に関して次のように述べている。

(現代においても)国際政治の一番基礎にあるのは、軍事力による勢力均衡(バランス・オブ・パワー)です。すでに東アジアの軍事均衡から見れば、日米が一体化することが死活的に重要になっていることが分かります。私は、二十一世紀の日本の安全を確保するには、日米同盟を盤石にすることが不可欠、と一貫して主張してきました。そのためには、米国にとっても日米同盟が不可欠でなければなりません。そのためには、例えば米艦に対する攻撃に対して、同盟国として反撃できるようにすればいいのです。……日米関係を盤石にすること、そして、米国情報を常に的確に把握すること。その二つのことができれば、二十一世紀も日本の自由と安全と繁栄を維持できると確信しています。これが外務省勤務四十年、退官後二十二年の試行錯誤から得た結論です。(同書、201~202ページ)

刀を抜かずして事が収まれば


 本連載2回目でも紹介したように、岡崎大使は外務省在職中、内部での評判は必ずしも芳しいものではなかったが、その薫陶を受けた人物が、内閣官房に設置されている「国家安全保障局」の中枢に座っているのは心強い。

 この国家安全保障局は、わが国の安全保障に関する外交・防衛政策の基本方針・重要事項に関する総合調整を行っているセクションであり、北朝鮮の状況を見極めるべく、現在多忙を極めているであろう。余談になるが、東日本大震災で失敗を重ねた民主党(民進党)政権下でなくて良かったとつくづく思う。

 刀を抜かずして事が収まれば、言うことはない。日本人のみならず、無辜の民に犠牲者が出るのは耐え難い。刀を抜くとするならば、明確な勝算のもと、一気に限定的に行われるのだろう。

 日米同盟の真価が問われている。そうしたぎりぎりのせめぎ合いが、いま行われている。(了)

(文責=育鵬社編集部M)

国際情勢判断・半世紀

外交戦略論の論客にして安倍外交の指南役だった著者が、後世の日本人に遺す唯一の回顧録!




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