フランス大統領選挙における「極右」という意味

バスティーユ牢獄の襲撃(フランス革命)

バスティーユ牢獄の襲撃(フランス革命)

マクロン仏大統領誕生


 フランスでマクロン新大統領が誕生した。シリア内戦により発生した大量の難民や移民問題、それにイスラム過激派によるテロを抱えるヨーロッパの政治が揺れている中で、アメリカ・トランプ大統領の誕生という結果を受けて行われた今回のフランス大統領選挙。

 着実に支持を伸ばしてきたルペン候補が当選するのではないかという不安を抱く「市民」の反対運動も過熱して、マスコミ報道も膨大な量になったが、結果はあっけなくマクロン氏の圧勝ということで終わった。

 若干39歳。歴史上で最も若いマクロン大統領の経歴は、金融界出身のお金持ち超エリート。それだけ見ると、庶民の味方という感じはあまりしないが、格差社会の問題があるはずのフランス国民にとっては、そういう部分は判断の基準ではなかったということか。

 それ以上に気になったのは、日本におけるフランス大統領選挙の報道の仕方だ。マスコミを通して、フランス大領領選挙を見る私たちにとって、「極右ルペン」との表現で繰り返し日本のマスコミが報道するのが目についた。

 争点として大きく扱われているのは、やはりEU離脱と移民政策。ルペンが党首を務める国民戦線の主張で「移民排斥」という過激な表現があったが、現在のルペンが大統領候補として掲げた公約が、日本人の私たちからみて常軌を逸したものとは思えなかった。だから、ルペンの主張を日本のニュースで見ても、なぜそれが「極右」なのかがさっぱりわからない。

 移民をほとんど入れない日本に移民問題の是非を批判する資格はないし、東アジアでのEU版がつくられることもありえない中で、日本人に、こういう主張をしている政治家さえも、「極右」だというレッテルを張りたいのでないかと邪推してしまった。

専門家が分析すると


 以上のようなフランス大統領選挙の報道で感じる違和感について、官僚時代にフランスに勤務した経験を持ち、西欧史にも詳しい評論家八幡和郎氏がアゴラで明快に論じていたのでご紹介しよう。

「ルペンについては、ひとことでいえば、『ルペンはフランスの政治を論じる場合には歴史的な定義に従って極右』ということだ。」

 どういうことかというと「それは、フランス革命以来の共和主義の伝統から少しはずれることがあるからだ。極右とか極左というのはそういう大革命理念とはずれるものをいうのであって、他の国と違うニュアンスが加わる。」

 それは「極右」で違いないということか。であるにしても、日本のニュースの中で「極右」という表現を目にしたり、耳にしたりすると、ファナティックな人間といったイメージになるが、八幡氏は続けてこう解説する。

「ヨーロッパではEU脱退とかユーロ離脱とかいうと、極右とか極左とかいうことになると思う。イギリスではEU離脱をいっても極右とはいわれないだろうが、それは、ユ―ロにも入っていないし、離脱した場合に予想される混乱が格段に違うからだ。」

「その意味では、今後、ルペンがEUやユーロからの離脱を将来の検討課題というくりあに引っ込めたら、そのときは、極右と呼ぶのが本当に適切かどうかということが議論になるだろう。そういう意味で、やはりルペンは、フランス政治を論じる場合には極右なのだ。」

正しい判断のための知識


 八幡氏の分析を読むと、日本での報道が「偏向している」とは言えないということだろう。であれば、日本のマスコミが報道する際に、上記のような解説をきちんとすることによって、私たちの印象も大きく違ってくる。

 そもそも日本人にとって、複雑な歴史を経たヨーロッパのニュースを理解することは容易ではない。歴史上では、王族間の結婚もあり、「ヨーロッパはひとつ」という意識を持つ人が多いのも頷ける。だからこそ、EUもできたわけだし。

 西欧の歴史を、その背景から日本人が理解するのは難しいが、八幡和郎氏が書いた『世界と日本がわかる最強の世界史』を読むことで、世界史の基本的な流れが見えてくる。同書は新書本に世界史をまとめているので、文量的にもお買い得の1冊だ。

(文責/育鵬社編集部A)

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