異能・異端の元財務官僚が日本を救う(3)――近刊『日本を救う最強の経済論』の凄い中身
天下りが経済活動に与える悪影響とは
髙橋洋一氏が、財務省の高官から「三度殺しても殺し足りない」とまで言われたことは、前回で触れた。その尋常ならざる嫌われようの理由にこそ、彼のエコノミスト、経済学者としての真骨頂がある。 高橋氏は、9月2日発売の近刊『日本を救う最強の経済論』(発行=育鵬社、発売=扶桑社)で次のように書いている。 (官庁の)ヒモ付きの天下りがなぜ悪いのかと言えば、アンフェアだからだ。経済活動や経済的な取引というのは、基本的にフェアでなければならない。フェアだからこそ、健全な競争が起き、その結果として経済や技術が発展し、社会が回っていく。……天下りを受け入れた企業が、補助金をもらい、有利な情報を入手でき、競合他社を出し抜くことが常態化すれば、……アンフェアな経済活動が社会全体を蝕んでいく。(同書、120~121ページ) 実際、髙橋氏は、官僚でありながら天下り規制の法案を作成し、財務省のみならず、霞が関のすべての住民(国家公務員)を敵に回したと言ってよい。 官僚という職種にありながら、官僚の最大の既得権益であった天下りを自ら規制する、その政策的合理性、さらに理論的な基盤はどこから生まれているのか。「リフレ派の牙城」プリンストン大学で学んだこと
高橋洋一氏が1998(平成10)年から3年間留学したプリンストン大学には、後に米連邦準備制度理事会(FRB)議長を務めるベン・バーナンキ氏といった世界の最先端の一級の経済学者がいた。 最先端の経済学理論を理解するには、数学の素養がなければ無理である。しかし、髙橋氏はもともと数学の学者になろうと思ったほどに素養がある。バーナンキ氏やポール・クルーグマン(2008年度ノーベル経済学賞受賞)氏らの経済理論が面白いように頭に入る。 高橋氏が留学したプリンストン大学では、 「そうした専門家たちが毎週のようにセミナーを開き、筆者も参加して日本の金融政策の議論を繰り返したのだ」(同書、77ページ) というから、勉強を続けたかったのだろう。一方、財務官僚の主流は東京大学法学部卒という文科系であるため、それほど数学の素養はない。最先端の経済理論を吸収するのは重荷であり、2年間と言われれば2年間で帰国する。 では、髙橋氏はこのプリンストン大学で何を学んだのか。次のように記している。 プリンストン大学はいわゆる「リフレ(reflation)派の牙城」だというか、海外では「リフレ」が普通である。……ちなみにリフレとは、リフレーション(再膨張)の略で、政府・中央銀行が数%程度の緩やかな物価上昇率をインフレターゲット(インフレ目標)として定めるとともに、長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が買い上げることで、マネーサプライ(通貨供給量)を増加(再膨張)させてデフレーションから抜け出すことを目指す経済政策である。(同書、77ページ) では、日本はそもそもなぜバブル崩壊後、「失われた20年」と呼ばれるほどの長きデフレーション(デフレ)に陥ったのか。(続く) (文責=育鵬社編集部M)
『日本を救う最強の経済論』 バブルの対策を誤り、その後の「失われた20年」を系統的に解き明かし、今後のわが国の成長戦略を描いた著者会心の書。 |
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