世界文化遺産から読み解く世界史【第10回:モン・サン・ミシェルVS厳島神社】

モン・サン・ミッシェル(加工)

モン・サン・ミシェル

ゴシックの精神を表す人工の森――モン・サン・ミシェル

 モン・サン・ミシェルといえば、海の上に浮かんだように見える姿で知られるフランスの修道院建築物です。フランスの西海岸にあるサン・マロ湾にある小島の上に建てられていて、高さは80メートルもあります。  この島自体は小さな花崗岩の円錐形の岩山で、その上にトゲ刺すように塔が建っている姿が特徴的です。海に囲まれた海と建築物との見事な調和は日本人にも非常に人気があります。  この小島にモン・サン・ミシェルが建築されたのは、708年、アヴランジェの司教オベールの夢に大天使ミカエルが現れ、岩山の上に聖堂を建てるようにというお告げを受け、それに従って礼拝堂を建てたのが発端になったといわれます。以来、この島は聖地となって、巡礼者が訪れるようになりました。

海の中に建つ厳島神社

 一方、厳島神社も海の中に建ち、海と調和しているという意味で、モン・サン・ミシェルと同じ趣があります。建築物が海の中にあるという例は、世界でも数少ないといっていいでしょう。  この厳島神社は、瀬戸内海の広島湾に浮かぶ宮島にあります。周囲31キロの小島ですが、標高530メートルの弥山という山があり、島全体が信仰の対象になってきました。こうした山の麓にある神社ですから、やはり聖なる場所として崇められてきました。  厳島神社は、最初、推古天皇元年である593年に創建されたといわれています。現在の姿に整えられたのは1168(仁安3)年、平清盛の時代です。平安時代の寝殿造の建築様式を巧みに取り入れた華麗な社殿に特徴があります。まるで海を敷地としているような、海と調和した厳島神社の姿は、モン・サン・ミシェルとよく似ています。 (出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社) 【田中英道(たなか・ひでみち)】 東北大学名誉教授。日本国史学会代表。 著書に『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』ほか多数。
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