愛国のエコノミスト(2)――失業率を減らし雇用を確保することは「経世済民」の根幹

平成28年7月、安倍首相を表敬したリフレ派の泰斗、ベン・バーナンキ前FRB(連邦準備制度理事会)議長。(首相官邸HPより)

二つ目は、リフレ政策の必要性


 高橋氏が、世にはびこる俗論とのギャップを埋めるべく「使命感」をもって取り組んでいる例をもう一つ上げるとすれば、それはリフレ政策である。前掲書から抜粋して紹介したい。

「筆者は1998年から2001年まで(大蔵省からの留学で)米国のプリンストン大学にいたが、(この大学は)『リフレ派の牙城』であった。リフレとは、リフレーション(再膨張)の略で、政府・中央銀行が数%程度の緩やかな物価上昇率をインフレターゲット(インフレ目標)として定めるとともに、長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が買い上げることで、マネーサプライ(通貨供給量)を増加(再膨張)させてデフレーションから抜け出すことを目指す経済政策である」

「当時のプリンストン大学には、ベン・バーナンキ(後の米連邦準備制度理事会=FRB議長)など世界最先端の経済学者がいた。そうした専門家たちが毎週のようにセミナーを開き、筆者も参加して日本の金融政策の議論を繰り返した。そうした環境の中で3年間も揉まれてきたので、日本へ戻ってきたときには、日本国内の議論が時代遅れに感じたものだ。つまり、15年前から筆者の中では、アベノミクスの中心的経済政策であるインフレ目標が、研究や議論の対象ではなく、現実に実行すべき政策と考えていた」(以上、前掲書77~78ページ)

 実際、第二次安倍政権が発足した2012(平成24)年12月末以降、高橋洋一氏の提言に基づいたインフレ目標2%と、上記による通貨供給量の増加、さらに金融緩和というリフレの政策はアベノミクスとして実現され、それまでのデフレ下の不況から日本経済は回復し、失業率は、民主党政権時代の4.3%から2%台と劇的に良化している。

経済失政は戦争を招来する


 高橋氏は、前掲書『日本を救う最強の経済論』の冒頭の書き出しで次のように言う。

「経済政策は何のために行うのか。それは一言でいえば、『失業率を減らし雇用を確保する』ためである」(1ページ)と言い切る。

 さらに、「経済が悪くなると戦争が起きる可能性が高まる。経済が悪化して景気が悪くなり失業率が高くなれば、国民の不満が鬱積しそれを回避し、社会の不安定化を解消するために為政者は戦争を起こす」(192ページ)と明快に述べる。

 このことは、経済失政により食料も満足に得られず、疲弊に喘ぐ北朝鮮の直近の動きを見れば一目瞭然であろう。また、いずれ「中進国の壁」(177ページ)に突き当たる中国もまたしかりであり、経済成長の鈍化の中で異常なまでの軍事費の増強(2017年は1兆元超え=約16兆5000億円)は、東アジア地域において具体的な脅威となっている。

  そもそも「経済」という言葉は、中国の古典の中にある「経世済民(けいせいさいみん)」が起源である。これは「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」ことを意味している。つまり、民を救うために様々な政策を行うことが「経済」なのである。

 世の中の専門家と称される多くのエコノミストや経済学者は、平穏無事なシンクタンクや大学に所属し自分自身が御身安泰であるために、さらに「現代においては国連もあるので、経済の悪化で戦争が起きるはずがない」という戦後教育の強い思い込みを持っているためか、失業率を減らすことに切実さが感じられない。

 彼らには、経済学の原点である「経世済民」という言葉を思い出すとともに改めて現実を直視して、5年を迎えようとする「アベノミクス」の成果や失業率が劇的に回復したことに対する骨太な「評価」を行って欲しい。(続く)

(文責=育鵬社編集部M)

日本を救う最強の経済論

バブルの対策を誤り、その後の「失われた20年」を系統的に解き明かし、今後のわが国の成長戦略を描いた著者会心の書。




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