世界文化遺産から読み解く世界史【第24回:ヨーロッパ思想の基本となったキリスト教文化の形成――ストラスブール】

ストラスブール大聖堂入口(縮小)

ストラスブール大聖堂入口

ゲーテが「ここにドイツがある」と語ったとされる町

 その一方で、パリ大学をはじめとする大学がつくられて、神学を中心に学問研究が盛んに行われるようになりました。    私はフランスのストラスブール大学に留学をしていました。ストラスブールは、ドイツに近いフランス、ライン川の支流であるイール川の河畔にあって、現在はヨーロッパ議会が置かれているところです。「街道の町」という名のとおり、交通の要路にあります。  ゴシック時代は、都市という単位ごとに発達したために、各国が別々に発達したような印象もあるのですが、その国が変われば、違う文化があるということではなく、ある種の均一性が見られるのです。  ストラスブールも、そうしたゴシック文化が花開いた町で、フランス的なものとドイツ的なものが融合されています。  この時代がフランスにとって、あるいはヨーロッパにとってその基礎を形成する時代であったということは、素晴らしいゴシック彫刻や建築だけではなく、数多くの思想家が生まれたことにもよるのです。  カトリックの神学では、フランスではパリ大学を中心に、トマス・アクィナスやアルペルトウスといった神学者が登場しました。  イタリアでは、ダンテやペトラルカ、ボッカチオといった詩人たちが生まれました。文学においても、フランスの詩の発生を跡づける多くの詩人たちが生まれました。そうした純文学の発展が、この時代を彩っているのですが、後に文豪のゲーテは、ストラスブールの教会堂を見て、「ここにドイツがある」といったといいます。それは「ヨーロッパがある」といいかえてもいいと思うのです。ゴシックの中にヨーロッパがあったのです。  ヨーロッパ各地の世界文化遺産は、普遍的なヨーロッパの見事さを、ゴシックの時代の遺産に色濃く示しているわけで、私はヨーロッパの普遍性を「近代」に置く考え方には賛成しません。 (出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社) 【田中英道(たなか・ひでみち)】 東北大学名誉教授。日本国史学会代表。 著書に『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』ほか多数。
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