世界文化遺産から読み解く世界史【第25回:ヨーロッパ思想の基本となったキリスト教文化の形成――ストラスブール(続)】

ケルン大聖堂

ケルン大聖堂

632年の歳月をかけてつくられた大聖堂

 ドイツではゴシックが、ケルン大聖堂などもそうですが、19世紀までずっとつくられ続けるということに注目してみましょう。  つまりこの大聖堂がつくられ始めたのは1248年のことで、内陣が14世紀前半に完成します。以後工事が滞り、16世紀に中断します。そしてこれが、1814年に図面が発見され、1842年にゴシック様式のケルン大聖堂の工事が再開され、1880年に完成したのです。  この六百数十年かけてつくられたケルンの大聖堂によく表されているように、文化の連続性、継続性の元は、ゴシック時代につくられているのです。  パリにはサント・シャペルという礼拝堂があります。ここには、旧約聖書を題材とした1134の場面が、ステンドグラスで表されています。それは、ノートルダム大聖堂のステンドグラスと並んで、ステンドグラスの最高傑作といえるでしょう。  パリもこの時代につくられたということができます。キリスト教がこの町の文化を支え、16世紀に、フランソワ1世によってパリ大学がつくられ、ルイ14世のルイ王朝によって学問の都と位置づけられました。デカルトやパスカルといった近代の思想家もこうした風土の中に生まれたのです。  つまりゴシックから始まるキリスト教文化の形成が、ヨーロッパの思想の基本となったのです。近代から思想が始まったのではなく、この時代から始まっていたのです。このような認識が、見失われがちではないかと思われます。 (出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社) 【田中英道(たなか・ひでみち)】 東北大学名誉教授。日本国史学会代表。 著書に『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』ほか多数。
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