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人気漫画『文豪ストレイドッグス』主人公のモデル中島敦の代表作「山月記」とはどんな話か?
2019年10月31日
人気漫画『文豪ストレイドッグス』主人公のモデル中島敦の代表作「山月記」とはどんな話か?
山下徹
生誕110年であらためて注目される中島敦とは?
人気漫画『文豪ストレイドッグス』主人公のモデルである作家の中島敦(1909~1942年)は33歳でこの世を去った夭折(ようせつ)の作家として知られています。
1968年に出版された角川文庫版の中島敦著『李陵・山月記・弟子・名人伝』は今でも読み継がれている。(画像は『文豪ストレイドッグス』カバーバージョン)
中国の史実・古典に題材を求めた作品は死後評価され、生誕110年となる今年は神奈川近代文学館で特別展「中島敦展――魅せられた旅人の短い生涯」が開催されるなど、今も人々に親しまれている作家です。
中島敦の代表作「山月記」
中島敦の作品として広く知られているのは、高校の教科書などにも掲載されている「山月記」でしょう。忘れている人も多いと思いますので、あらすじを簡単に紹介します。 ……唐の時代、隴西(ろうさい)の李徴(りちょう)は若くして科挙試験に合格する秀才でしたが、役人程度の身分に飽きたらず、名を成そうと詩人を志します。しかし、役人を辞めて取り組んだために、たちまち生活が貧窮してしまいました。一向に芽が出ない自分の才能に歯がゆくなった李徴は、やむなく地方官吏に復職します。 ところが、かつては李徴が歯牙にもかけなかった連中は、いまや彼よりずっと上の役職にいました。「自分の方が能力があるのに」という自負が強ければ強いほど、能力とは別にいい役職に就いている男たちが妬ましい。李徴はそれに耐えきれず発狂し、行方知れずとなってしまったのです。 一年後、旧友の袁傪(えんさん)は李徴と山の中で邂逅(かいこう)します。そこで袁傪は、卑小なる自尊心、裏を返せば嫉妬のために虎に身を落とした悲劇の男の身の上を聞くのでした。……
嫉妬心と羞恥心
この「山月記」について、明治大学文学部教授の齋藤孝さんは、
『大人のための道徳教科書』
(育鵬社)で、「『嫉妬心』の業火(ごうか)で焼かれた末路を、これでもかと躊躇なく書き表し、私に教えてくれた」作品と述べています。
齋藤さんも実は若い頃、この「嫉妬心」に心が支配されていた時期があったそうです。「大学院にいて悶々と学問だけをしていた二十代の私にとって、社会で華々しく活躍している大学の同級生などに、強烈な嫉妬を感じていました。そしてその感情は、知っている人だけに留まらず、世で成功しているすべての人たちに向けられるような悲惨な有り様でした。」(『大人のための道徳教科書』) 「山月記」では、虎になった李徴は、嫉妬心に心が支配されてしまった原因として、「己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了(しま)ったのだ。」と赤裸々に告白しています。 この羞恥心について、齋藤さんは次のように説明します。「『汝自身を知れ』や『吾日に三たび省みる』ことで、この『羞恥心』を自覚し、自分を向上させるエネルギーにできればいいのですが、得てして人は、逆に本当にいいものをゆがめて評価したり、前向きな心をしぼませてしまったりして、おのれを疲弊させてしまうものではないでしょうか。つまり『虎』になってしまうのです。 ニーチェも『嫉妬の炎につつまれた者は、最後には、さそりと同様に、自分自身に毒針を向けるのだ。』(『ツァラトゥストラ』)と言っています。ルサンチマン(怨恨)を持つ者は社会的弱者であり、彼らは自身では社会的格差を解消できない時に、敵を想定することで価値判断を逆転し、敵を攻撃するに至るのだというのです。」(『大人のための道徳教科書』) 現代を生きる人々にも通じる嫉妬心や羞恥心といった普遍的な感情を、中国の古典を題材に著した「山月記」が長く読み継がれている理由は、このあたりにあるのでしょう。 <文/山下徹>
山下徹
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大人のための道徳教科書
』
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この「山月記」について、明治大学文学部教授の齋藤孝さんは、『大人のための道徳教科書』(育鵬社)で、「『嫉妬心』の業火(ごうか)で焼かれた末路を、これでもかと躊躇なく書き表し、私に教えてくれた」作品と述べています。 齋藤さんも実は若い頃、この「嫉妬心」に心が支配されていた時期があったそうです。「大学院にいて悶々と学問だけをしていた二十代の私にとって、社会で華々しく活躍している大学の同級生などに、強烈な嫉妬を感じていました。そしてその感情は、知っている人だけに留まらず、世で成功しているすべての人たちに向けられるような悲惨な有り様でした。」(『大人のための道徳教科書』) 「山月記」では、虎になった李徴は、嫉妬心に心が支配されてしまった原因として、「己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了(しま)ったのだ。」と赤裸々に告白しています。 この羞恥心について、齋藤さんは次のように説明します。「『汝自身を知れ』や『吾日に三たび省みる』ことで、この『羞恥心』を自覚し、自分を向上させるエネルギーにできればいいのですが、得てして人は、逆に本当にいいものをゆがめて評価したり、前向きな心をしぼませてしまったりして、おのれを疲弊させてしまうものではないでしょうか。つまり『虎』になってしまうのです。 ニーチェも『嫉妬の炎につつまれた者は、最後には、さそりと同様に、自分自身に毒針を向けるのだ。』(『ツァラトゥストラ』)と言っています。ルサンチマン(怨恨)を持つ者は社会的弱者であり、彼らは自身では社会的格差を解消できない時に、敵を想定することで価値判断を逆転し、敵を攻撃するに至るのだというのです。」(『大人のための道徳教科書』) 現代を生きる人々にも通じる嫉妬心や羞恥心といった普遍的な感情を、中国の古典を題材に著した「山月記」が長く読み継がれている理由は、このあたりにあるのでしょう。 <文/山下徹>古今東西、37の名言・名文が、日ごろのモヤモヤを考えるヒントになります
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