「自分は貧困だ」と気づいていない若者が多い実態
―[[若者の貧困]どん底ルポ]―
「ネグレクトをしている親が、将来的にはカネを子供から搾取しようと大学だけは行かせる、というケースがあると知ったときは衝撃でした。ある20代女性は、明らかな虐待を受けているのに友達の前では“普通の女子大生“を装って一切隠していたそう。支援が必要な状況でも『自分は貧困だ』と気づいていないコが本当に多いんです」
そう話すのは、路上での声掛けなど青少年保護活動を行うNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュン氏だ。今、必要な支援の形を尋ねてみた。
「問題なのは、自分たちを支援してくれる法律や窓口をどう使えばいいのか知らないこと。言葉自体知らないし、ネットで検索しても窓口までたどり着けない。なかには『もっとヒドい人がいるだろうから、私が行っちゃダメだ』と思うコすらいるわけです」
また、窓口にたどり着けても、支援制度がニーズをくみ取れていない状況があるという。
「例えば住居がない人を自治体がサポートする『チャレンジネット』に関しても、未成年の場合は利用するのに親の同意書が必要になります。関係性が悪いのにそれはないだろう、と。現場の声をまだまだくみ取る必要があると思う」
近年は奨学金が問題になることも多く、返済する必要がない給付型奨学金の拡充も進められている。
「それ自体はいい傾向ですが、ではどのくらいの子供が利用できるのかといえば、まだまだ足りない。今は6、7人のうち1人が貧困状態といわれているので、1学年100万人とすれば14万人も貧困の子供がいるわけです。それに対し、成績のボーダーをどうするか。貧困家庭出身でも文化資本は高いコもいるし、一方で虐待を受けているコもいて、まちまちなんです。勉強環境に差があるから『成績が悪いコはダメ』では片づけられない」(「もやい」の大西連氏)
厚生労働省発表2015年の相対的貧困率は15.6%で、2012年(16.1%)から改善している。
「けど、所得平均はこの18年間で約54万円も下がっている。低所得層は確実に増えていて、それだけ若者にとっての“普通の生活“という基準も下がっています」(同)
「若いのだからなんとかなる」という自己責任論が、いかに古くさい考えなのか我々は知るべきだ。
【BONDプロジェクト 橘 ジュン氏】
困難を一人で抱えてしまう女のコに寄りそい、路上でも声掛けや保護活動を精力的に行う。著書に『最下層女子校生』(小学館)ほか
― [若者の貧困]どん底ルポ ―
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