サッカー選手の自己啓発本が売れる日本に、イタリア人が苦笑
ビジネス本ブームの日本。己を鼓舞してくれたり疲れたココロを名言で癒してくれたり、サラリーマンのいかなる悩みも受け止める充実っぷりである。が、裏返せば、現状への不満不安の表れでは? 世界各国、ビジネス本の売れ筋を見れば、その国の経済や社会、文化が見えてくる!
【イタリア】ビジネスマナーは本よりパワハラ指導で学ぶ!?
陽気でお気楽といったイメージのイタリア人。仕事に悩み本を手に取るという姿は想像できないが、予想を裏切らず、「読まない」らしい。
「人間関係の本とか仕事のモチベーションを上げる本とか、イタリア人が見たら絶対に笑うよ。『上司のための部下の叱り方』みたいな本は『みっともない!』って(笑)。『英文ビジネスメールの書き方』といった基礎的なマニュアルや資格試験の参考書はあるけど、日本の自己啓発書に近い本は少ないね」
そう話すのは、日本で働くイタリア人のファブロさん。国民の読書傾向はフランスに近いよう。
「プライベートな時間に読む本は文学が中心。ビジネスを勉強する本も、ユーロ危機に焦点を当てた解説書とか、中世の経済や世界恐慌みたいな、過去の歴史から学ぶ本が多いみたいだね。マルクスの『資本論』は今も売れているよ」
では、会社での人間関係や将来に迷ったときも本は読まない?
「まず人に相談。本よりも一対一のコミュニケーションが大事。社会人としてのマナーだって、インターンシップとか実体験で身につけていく。日本だとパワハラで訴えられるような上司ばかりで、ストレスは凄いけどね」
それでもイタリアの若者は会社を辞めない。若年層の失業率が30%超で、職も選べず、“働きがい”などに悩めない状況なのだ。
「仕事に選択肢などそもそもないから、自分で選ぶことのできるプライベートを大事にする。だから日本のように仕事の成功=人生の成功のような本が少ないのかも」
●『マネジャーのための「孫子の兵法」』
(Sun Tzu. L’arte della Guerra)
中国の兵法書『孫子』を、管理職向けに解説した一冊。原典の翻訳もイタリアでは人気のようで、権力について冷酷に論じたマキャベリ『君主論』を「高校生でも知っている」というこの国らしい人気作だ。「イタリア人は上司は部下を、部下は上司を敵と思ってるからね(笑)」(ファブロさん)
●『伝染するアイディアを作ろう!』
(Create! Progettare idee contagiose)
ソーシャルメディアのマーケティングがテーマの本。IT関連ではジョブズの伝記も人気。「サッカー選手の伝記も人気だけど、日本のスポーツ選手の自己啓発書は、イタリア人なら絶対バカにする(笑)。選手としてはスゴくても、人生の話は別だからね」(ファブロさん)
※本のタイトルは邦訳が出版されているものは邦訳のタイトルを。そうでないものは、編集部がタイトルを訳しました
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