アップル自殺工場が工員に台湾旅行、iPhone 4、小遣い6万円プレゼント。その真意は?
2010~2011年にかけ、過酷な労働条件のため、中国で工員の自殺者が相次いだアップルの委託製造企業・フォックスコン。iPhoneやiPadなどアップルの人気製品は、劣悪な労働環境によって生み出されていると欧米でも指摘され、世界中で非難の声があがったことは記憶に新しい。2月にはニューヨークのアップルストア前で、労働環境の改善を求めるデモも行われ、全米で25万人分の署名がアップルに提出された。
一方、日本では3月、フォックスコンの親会社である鴻海グループがシャープの筆頭株主になったが、同社は現在、企業イメージ回復のため、あらゆる方法を模索しているようだ。先日、ある試みが行われた。
そのうちのひとつが中国の工員217人を本社のある台湾に招待するというもの。中国全土にある22の工場から、優秀な工員を選び、1週間の台湾旅行と1人1台のiPhone 4、さらに小遣いとして5000元(約6万円)をプレゼントしたのだという。フォックスコンの工員の平均的給与は2万5000円程度。5万~6万円するiPhone 4は彼らにとって手の届かない代物なのだ。台湾旅行まで含めれば、彼らの1年分の給料になるではなかろうか。
台湾メディアは今回の件に関して「フォックスコンは、外部からの工員給与引き上げ圧力をかわすため、福利厚生に力を入れていることをアピールしたかった」と報じている。台湾メディアの記者が工員たちに給与の話をふると、緘口令が敷かれているのか、誰も「答えられない」と言うばかりだった。
今年下半期にiPhone 5の発表が噂され、早くもフォックスコンがフル稼働になるのではという予測も多い。また同社は中国内陸部での工場建設を加速させるなど、ますます業績を伸ばしている。今回、台湾旅行をプレゼントされた優秀な工員たちの後ろには、今も改善されたとは言いがたい労働環境で苦しむ数十万人の工員がいることを忘れてはいけないだろう。
【取材・文/ドラゴンガジェット編集部】
ガジェット好きのライターや編集者、中国在住のジャーナリストが中心メンバーとなり、2012年1月から活動を開始。東京と深セン、広州を拠点に、最新の話題をお届けする。
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