ディズニーは「もはや金持ちしか楽しめない」?クリスマスイベントの混雑で見えたもの
チケット価格が上昇するたびに大きな話題となるディズニーリゾート。現在の東京ディズニーリゾートのチケットは変動価格制を採っており、7900~1万900円となっている。遊びに行くハードルが上がっているというネットの声に反して、今年のクリスマスイベントも例年通りの混雑日が続いている。
近年のディズニーは、マーケティング的な観点から「富裕層しか行けなくなった」という見方をされることが多い。しかし、「ブランディングの観点からは、ニーズ(必要)とウォンツ(欲しい)を明確に分けた戦略と見ることができる」と松下氏は話す。
「ディズニー作品は、小さな子どもの発達教育にはとりわけ有効的です。普段の日常生活においても、助けられている親は多いでしょう。ディズニーチャンネルやディズニーショップは、正にそういったニーズを補うアプローチと考えられます。対するディズニーリゾートは、どうしても行きたい方々のウォンツを満たすアプローチだと言えます」(松下氏、以下同じ)
とはいえ、度重なるチケット価格の値上げに嘆く人が多いのも事実。物価上昇の波に乗り、利益追求のために値上げに踏み切ったように見えたとしてもおかしくはないだろう。しかし、「ブランディングの観点からすれば、『利益追求のための値上げ』ではなく、本質的なブランド戦略の一手としてチケット代を値上げしたのだと考えられます」と松下氏。
その理由は、ディズニーはブランディングの神髄とも言える「強固なファン作り」に軸足を置いているからだと続ける。
「私が提唱する共感ブランディングでは、その企業やブランドが持つ信念やこだわりに共感してくれるファンを作り、そのファンに支えられて、共に成長していくことで、価値を高めていくと説明しています。まずは共感者を増やすために情報提供・拡散。その後で情報管理・情報統制に力を入れてブランド価値の希薄化を防止しながら、ファンと密接な関係を構築し、熱狂的なファンを増やしていきます。そうすることで強固なファンコミュニティが形成され、ブランドは継続できるのです。
世界的な有名ブランドのエルメスがわかりやすいでしょう。エルメスは、元は馬具製品を作っていましたが、時代が変わって馬具の需要が減ったため、その製法でバッグを作るようになりました。作るものは馬具からバッグに変わりましたが、確かな技術を持つ職人がひとつひとつ丁寧に仕上げるというこだわりは変えませんでした。そこにたくさんの共感者が生まれ、世界的に愛されるブランドとなったのです」
「ディズニーリゾートは富裕層しか行けなくなった」のではないのだろうか? 共感ブランディングを提唱するブランディング専門家の松下一功氏は、「クリスマスの時期なので、消費の二極化現象(ニーズとウォンツ)が顕著に現れたからだろう」と話す。そして、チケット価格の値上げは単なる利益追求ではなく、ブランド価値向上のための布石なのだとも。その理由とは?
チケット代アップはブランディング強化の方法
エルメスに見る強固なブランディング力の作り方
経営コンサルタント、共感ブランディングの提唱者。株式会社SKY PHILOSOPHY 会長。40年近く、企業アイデンティティーやブランドコンセプトの確立を専門とし活動。2011年より「真のブランディングを世に伝える」ことをミッションに、講演、講師、コンサルティングを行う。2024年、著書『共感ブランディング®ドリル』で、自身の体系的オリジナルロジックを一般公開。ブランディングのわかりやすい実践書として高評価を得ている
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