更新日:2012年09月22日 09:03
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「日本ダメだ」論は百害あって一利なし!【三橋貴明×飯田泰之】Vol.5

【短期集中連載】三橋貴明×飯田泰之対談 [日本は成長できる!]Vol.5 経済評論家で作家の三橋貴明氏とエコノミストの飯田泰之氏。具体的な政策提案に違いはあれど、共通するのは「脱デフレ以外の経済成長なし」、そして「日本は成長できる!」という点だ。日刊SPA!では、「短期集中連載」として三橋貴明氏と飯田泰之氏による過激な経済対談を5回にわたってお届けする。 ⇒Vol.4『財政難だから消費増税。で、財政難になる!?』
https://nikkan-spa.jp/289190
飯田泰之氏

「借金してでも新しいことにチャレンジした人が、後で振り返って得だった、と言える社会がいい」(飯田)

飯田: それにしても現在の日本は、20年間不況が続くと、すべてがここまで劣化するんだというお手本がいたるところに出てきています。「ここまでヒドイことになる」んだと。その最たるものが、シャープですよね。結局のところ、シャープがなぜここまで厳しい状況になったのかというと、もちろん液晶に特化したからというのがあるんですが、それ以上に、国内投資を頑張って行っていたから。積極的に国内投資をしたことが経営の失敗の原因になるっていうのは、それは日本にとって最高に不幸なことですよ。 三橋: そうですよね。そんなことをしたら企業は投資しなくなる。雇用を生まない。 飯田: シャープの堺工場などは、後になって言えば過剰投資なんですが、それを過剰投資にならない環境を作るのが政治、政策です。日本で頑張ろうと思ったところは経営危機に陥り、さっさと日本に見切りをつけた企業が生き残るのはどうかと思いますよ。
三橋貴明氏

「次の選挙では、小選挙区の候補者に「デフレについてどう思っているのか?」を問い、一番、まともな答えをした人に投票してください」(三橋)

三橋: これがデフレなんです。デフレが一番イヤだなと思うのは、デフレだとGDPが増えません。名目値が特に増えない。ということはつまり、国民全体の所得が増えないってことです。もし、今の日本で「俺は頑張って所得をいっぱい稼いだ!」という人がいたら、デフレ下では他人の所得を奪っていることになるんです。これが続くと、足の引っ張り合いどころか、反目し始めて争いになり、最後は革命ですよ。人心も荒むんです。 飯田: どんどん成長している社会――物価が上がっているだけでもいいんですが、その社会では足の引っ張りあいをしているヒマなんてないですもん。 三橋: より稼ごうとなりますからね。 飯田: 1950年代~1960年代に都内に一戸建てを建てた人って、実質負担額がゼロだったと言われています。所得が伸びて、土地の値段も上がっていった。タダで家をもらったのと同じ状態だと。それって、すごくいいことだと思うんです。家を建てるとか、起業をするとか、借金してでも新しいことにチャレンジした人が、後で振り返って得だった、と言える社会がいい。僕は、ふんわりしていても楽しく過ごせる社会が理想です(笑)。 三橋: この20年の不況でそうなるのも仕方ないのですが、「日本は成長しない」と信じてしまっている。成長しないとは、具体的には所得が増えないということですが、所得が増えないと思っている人が投資するはずがない。 飯田: やっぱり、いつも「次、何を買おっかな♪」って思っている社会がいいですよ。 三橋: そうすると、企業もガンガン投資して、新しいものがガンガン生まれ、もちろん負けるところもあるけれど、新たに出てくるものもある。マクロ的にも、基盤の部分は安定していて、その上で企業がガリガリ競争してつぶしあっている。これが正しい資本主義ですよ。今は真逆。上のほう、企業は妙に安定して競争しようとせず、基盤がボロボロになっている。 飯田: 早く選挙になってほしいですよね。ヘタしたら年内解散はないんじゃないかとも思いますが。 三橋: 私、ある民主党の有力議員さんに「デフレってなんですか?」と聞いたことがあるんです。その答えは「三橋君。デフレとは物価が下がることだよ」というものだったので、「どうして物価が下がるのですか?」と問い直すと、今度は「デフレだからだよ」って言うんですよ。どんなトートロジーだ!?と。まもなく総選挙がありますが、是非、小選挙区の候補者に聞いてほしい。「デフレについてどう思っているのか?」と。それで、一番、まともな答えをした人に投票してください。 飯田: 「日本ダメだ」論からいいことが生まれることはありえません。カラ元気を出せとは言いませんが、治安はいい、教育水準は高い。結構傷んできたとはいえインフラは整備されている。こんないい環境の国はないんですから。 三橋: 絶対に、そして今、徹底的に必要なのは「日本は成長できると」信じることです。「日本は成長できる」――この国民のコンセンサスができあがることが必要なんです。国民の意識さえ変っていけば、いい方向に向かうと思いますよ。今より悪くなる日本なんて、私は想像したくないですから。 【飯田泰之】 飯田泰之いいだやすゆき●1975年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。駒澤大学経済学部准教授。著書に『脱貧困の経済学』(共著・ちくま文庫)、『ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方』 (角川oneテーマ21) 『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ! 』(エンターブレイン) 【三橋貴明】 みつはしたかあき●1969年、熊本県生まれ。1994年、東京都立大学経済学部卒業(現:首都大学東京)。2008年に中小企業診断士として独立し、現在は作家、経済評論家としても活動している。著書に『崩壊する世界 繁栄する日本』『マスゴミ崩壊』『4万2246票』『国民の教養』(以上、扶桑社)、『コレキヨの恋文』(小学館)、『悲観論に踊らされるな! ニッポン経済集中講義』(技術評論社) <構成/鈴木靖子>
ぼくらの日本

経済成長を知らない世代へ

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