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財政難だから消費増税。で、財政難になる!?【三橋貴明×飯田泰之】Vol.4

【短期集中連載】三橋貴明×飯田泰之対談 [日本は成長できる!]Vol.4

経済評論家で作家の三橋貴明氏とエコノミストの飯田泰之氏。具体的な政策提案に違いはあれど、共通するのは「脱デフレ以外の経済成長なし」、そして「日本は成長できる!」という点だ。日刊SPA!では、「短期集中連載」として三橋貴明氏と飯田泰之氏による過激な経済対談を5回にわたってお届けする。

⇒Vol.3『何もしないのが“正解”の官僚仕事』
http://nikkan-spa.jp/289177


飯田泰之氏

「内閣府の甘く見積もったモデルでも、消費増税で法人税収と所得税収は減る、と出ている」(飯田)

三橋: 財務省が一番やりたいことは、増税はするが公共事業はしたくない、そういうことですよね。それで、今の共産党って、「民自公は消費税を財源に、大型公共事業バラマキを始める」って言いまくっている。飯田さんにも意見を伺いたかったんですが、これ、違いますよね。

飯田: 消費税増税法案附則第18条の話ですよね。附則第18条修正第2項――「経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」――つまり、「財政政策をします」というこちらに注目が集まっているけれど、僕はもっと第1項、消費増税導入の前提条件のほうを、アナウンスすべきだと思う。

三橋: 「平成23 年度から平成32 年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度」を目指すというのは、結構、厳しい条件です。

飯田: もっと言えば、それが達成できていれば、そもそも増税いらない(笑)。増税したとしても、たいしたダメージではありません。とにかく、「これが条件なんだ!」というのを徹底してもっと言うべきだと思うんですね。

三橋: そうしないと、財務省の思うがままですよね。でも、一番、問題なのは、附則18条は「増税の条件を満たすため」に公共投資で減災や防災に投資しますよという話で、自民党は「国土強靭化基本法案」、公明党が「防災・減災ニューディール推進基本法案」などを出している。共産党の言う、「私たちは庶民の味方です、自民党や公明党は増税して公共事業にバラまきますと言ってます。阻止しなくては!」っていうのは順番が違う。これで、国民の間で公共事業反対論が巻き起こってしまったら、来年の10月位に、法律に基づいて増税はする。しかし、公共事業はできませんでした、国土強靭化できませんでしたという、我々にとって最悪の、財務省にとっては最良のケースになってしまう。共産党は何を財務省の味方してるんだよって思いますよ。

飯田: 共産党って不思議なもので、財政政策も金融政策についても驚くほど保守的なんですよ。例えば、金融政策については日銀の独立性を守らなくては!というスタンス。なにか、日銀法を憲法と間違えているようで(笑)。

三橋: まさか、財政は均衡財政を!とか言うんじゃないでしょうね。

飯田: そうですよ。

三橋: 本当にそうなんですか!?

飯田 共産党は均衡財政主義です。

三橋 驚いた。どこが庶民の味方だ。

飯田: 共産党って、ケインズ主義が共産主義の最大の敵であることを感覚的にきづいているんじゃないでしょうか。共産主義は経済は安定しませんが、成長の代わりに平等がある。ケインズはある程度、平等を達成するし成長もさせるという。そうなると、共産主義を叩きのめしてしまいますから。

三橋: 成長して豊かになれば、誰も革命なんて言いませんからね。

飯田 みんな貧乏になって塗炭の苦しみを味わって、みんなが非正規労働者になると、革命の志士となって立ち上がる、と(笑)。

三橋: デフレがどんどん深刻化して、みんな貧乏になって不満をもって、他者を攻撃し始めて、足の引っ張り合いをして、階級闘争が始まったとき、そこで「私たちが味方です」と出てくるわけですね(笑)。

飯田: そうそう。私たちは200年、階級闘争をしています、と(笑)。修正主義者って、左翼業界では悪口じゃないんです。修正してはいけないんです。

三橋: 何それ。環境変化は無視するんですか。修正主義って、ある種「保守」ってことでしょ。現状を保守していきましょうということだから、それ批判したら……当たり前なのか。

飯田 とにかく、現状が壊滅状態になるまでほったらかしましょう、っていうことなので、それは現実的にありえない。ただ、もしかしたら、それが現実的になりそうな国が唯一あるとしたら日本なのかもしれない。

三橋: 消費税の報道で、新聞が汚いと思うのは、「2014年に8%・2010年10%」と断定的に報じていることです。まだ、いつ増税されるかは決まってはいませんからね。断定的に書くことによって、財務省は日本国民に「2014年に消費税アップ」という刷り込みをしているんですよ。ひょっとすると、2014年に「時の政権」が消費税増税に踏み切るかどうかの判断をする際、まだ状況はデフレ下にあり、政府が法律に則って「増税延期します」と言ったら……世論が「なんで増税しないんだ!」って反発する、なんてバカげたことが起きるかもしれない(笑)。

飯田: どんだけMな国民だ(笑)。まあ、そもそも論になってしまいますが、財政難だから消費増税、という話なのですが、内閣府モデルでも、消費税増税によって所得税・法人税・地方税合わせて大体、7兆円減収になると出ています。そうすると、13.5兆円の消費増税をして、大体6兆円の税収増。僕はそもそも、13.5兆円も取れると思っていないのですが、仮に13.5兆円の負担増でも6兆円しかならず、でも、13.5兆円の使途は決まっているわけです。財政危機が深刻化しているんですが、どうするんですか?という話です。

三橋貴明氏

「新聞は『2014年に8%・2010年10%』と断定的に消費増税を報じるが、まだ決まったわけではないんです」(三橋)

三橋: 内閣のモデルっておかしなモデルじゃないですか。例えば、消費増税で物価価格が上がれば消費が減るということをまったく考慮していなかったり。増税したい人に甘いモデルですよね。

飯田: その甘く見積もったモデルでも、法人税収と所得税収は減る、と出ているわけです。

三橋: 消費税増税で、普通に税収はマイナスになりますよね。でも、13.5兆円は何かに使う予定なんです。そうすると、財政難が進みますよね。一体、何がやりたいんでしょう。

飯田: そしたら、また増税ですよ。戦時中のスローガン「足りぬ足りぬ工夫が足りぬ」ではないですが、「足りぬ足りぬ増税が足りぬ」と(笑)。

三橋: 発想がよくわからないのは、社会保障費が毎年1.2兆円ずつ増えていく、だから消費税増税だというが、1.2兆円の自然増って、経済成長していたらたいした話ではない。税収は名目GDPとほぼ同じ動きをしますから、現在の税収が40兆円……つまり、3%くらい税収が増えればいいわけです。名目GDPの3%成長なんて楽勝ですよ。名目GDPだから実質で増える必要はなくて、実質1%、プラスインフレ率2%でいいわけですよね。その程度の問題。なのに、なぜ増税という話になるのか。

飯田: あと、ちょっと怖いのが、しばしば消費税の駆け込み需要を期待する声もありますけど、エコカー補助金、駆け込み需要がまったくないんです。それだけ、みんなおカネがない。これは僕、結構な非常事態だと思うんですよね。

三橋: 非常事態ですね。私、今の状況が結構「戦争」だと思っているのは、1998年に前年と比べて、自殺者が1万人増えました。2万人から3万人になって、それから年間3万人というのが14年間続いている。つまり、14万人が余計に亡くなっている可能性がある。これは日露戦争の戦死者の数を超えています。国民が死んでいく、ある種の戦争ではないかと。

⇒Vol.5『「日本ダメだ」論は百害あって一利なし!』に続く
http://nikkan-spa.jp/289241


【飯田泰之】
飯田泰之いいだやすゆき●1975年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。駒澤大学経済学部准教授。著書に『脱貧困の経済学』(共著・ちくま文庫)、『ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方』 (角川oneテーマ21) 『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ! 』(エンターブレイン)

【三橋貴明】
みつはしたかあき●1969年、熊本県生まれ。1994年、東京都立大学経済学部卒業(現:首都大学東京)。2008年に中小企業診断士として独立し、現在は作家、経済評論家としても活動している。著書に『崩壊する世界 繁栄する日本』『マスゴミ崩壊』『4万2246票』『国民の教養』(以上、扶桑社)、『コレキヨの恋文』(小学館)、『悲観論に踊らされるな! ニッポン経済集中講義』(技術評論社)

<構成/鈴木靖子>

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