キレる老人たちの暴走現場
―[キレる老人たちの暴走現場]―
10月10日、東京都世田谷区の住宅街で隣人トラブルが原因とされる殺人事件が起きた。被害者の62歳の女性は日本刀で斬りつけられて、搬送先の病院で死亡した。一見すると隣人トラブルに端を発した殺人事件であるが、容疑者である徳永重正が元警視の86歳の老人であったことが世間に衝撃を与えた。
作家・藤原智美氏が『暴走老人』を発表したのは‘07年のこと。キレる老人が社会問題として一躍注目を集めたのは、記憶に新しい。あれから5年。キレる老人や常識外れに暴走する老人たちの話題には、今なお事欠かない。
今回はこうした老人達の暴走っぷりを取材してみた。
◆わからないことに逆ギレする老人たち
「法務局や銀行で、よくキレるご老人の方を目にします」
と語るのは都内在住の司法書士Aさん(32歳・女性)だ。Aさんによると、彼らに共通するのは自分が“わからない”ことに対してキレているのだとか。
「例えば、法務局でよく見かけるのは自分の土地を登記しようとして、相談に来たのに謄本も必要書類も資料すらも持ってこず、相談員を困らせた挙げ句に逆ギレするのです。相談員の方が『権利書を見ればわかるんですが……』と言ったところ『いや、そんなもの持ってきてないからわからん! なんでここでわからんのだ!』って……。そりゃ、なんにもなければわかるはずないじゃないですか(苦笑)。たぶん、お金かけたくないから、自分でやろうとしているんでしょうが、わからなくなって逆ギレしちゃってるんでしょうね」
さらにAさんは続ける。
「仕事柄、銀行にもよく行くのですが、銀行で揉めているのはだいたい老人です。よくあるのは、皆が並んでいるのに係員を呼びつけて『いつまでかかるんだ!』と怒鳴っている老人ですね」
都内の金融機関で働いている男性にも話を聞いてみた。
「振り込め詐欺が社会問題になり、老人の方が高額の振り込みをしようとするとお声をかけさせていただくようにしたのですが、よくお叱りを受けますね。『そんなことはわかっとる! 馬鹿にするな!』と。幸い、私の職場では振り込め詐欺は今のところないのですが、もしもそれで被害にあったと思うと事後処理はどうなることか……」
こうしたクレーマー的なキレ方をする老人の話は、枚挙に暇がない。
◆クレーマー老人たち
「老人の方からのクレームは多いですね。店員のマナーが悪いとか、口の利き方が悪いとか……。結局、キレ始めると落としどころがわからなくなってくるんでしょうね。こちらは平身低頭、謝っているんですが謝れば謝るほどにキレてしまう……なんてこともありますね(苦笑)。若い方のクレームは、最終的に『値引きしろ』だったり『ポイント増などの付加価値を付けろ』というように、言い方は悪いのですが目的が明確です。でも、老人の方はこうした“落としどころ”がわからないんです。キレてしまって、収まりが付かなくなり暴走し続けてしまうといったところでしょうか」(男性・42歳・百貨店)
「先日あったのは、ウチのチラシを持ってきた60代くらいの男性の方で、これがもう、無茶苦茶に揉めまして……。いきなりチラシを広げて、『どれ買えばいいんだ!』って。何が欲しいかわからなければ、勧めようもないですよね。散々『なんだお前のその口の利き方は!』とかわめき散らしてたいへんでしたよ」(男性・27歳・衣料品量販店)
「旅行中のトラブルは多いですね。バスで一緒になった人と合わないとか、料理が不味かったからカネ返せとか。まぁ一番困るのは自由時間で時間に戻ってこなくて注意すると逆ギレされて、本社にクレーム入れられたなんて話も聞いたことがあります。老人の方たちのツアーって仲良くできれば、あとからお礼の手紙もらったり、お土産いただいたりして和気藹々として楽しいんですがねぇ……」(男性・37歳・旅行代理店)
⇒【後編】へ続く「まるで子どものような老人ホームの人間模様」 https://nikkan-spa.jp/311199 <取材・文/テポドン(本誌)> ― キレる老人たちの暴走現場【1】 ―
『暴走老人!』 老人の暴走は今日もどこかで |
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