マキタスポーツの提言「酷評するにも芸を持て!」
「3.50点以上(上位3.63%)は高い確率で満足できる」と食べログは主張するが、ならば低評価な店はどうなのか? 食べログでは評価されなくとも実はうまい店をリサーチしてきた(https://nikkan-spa.jp/593206)
◆一億総プチ評論家時代に提言「酷評するにも芸を持て!」
食べログで実態に見合わぬ低評価店が登場するのはなぜなのか。著書の『一億総ツッコミ時代』で、現代社会における“一般人のプチ評論家化”について分析したマキタスポーツ氏にその背景を聞いた。
「人が作品やお店を評価、レビューしたがる背景には、『自分も表現したい、承認されたい』という欲求があります。そして一般人には難しかったその行為が、近年はネットで簡単にできるようになった。気に入らないお店を酷評すれば、『斬ってやったぜ!』という気分も味わえ、溜まった怨念を気軽にデトックスできるわけです」
レビュアーが低評価をつけやすい理由はほかにもあるという。
「自分の好き/嫌いの感覚や意見を表明し、相手と戦うことは、いわば“斬るか斬られるか”の戦い。以前は本当に勇気の必要な行動でした。それが今は、お互いの顔が見えないところで、文字だけを使って相手を攻撃できる。そして『僕は』『私は』と自分を主語にせず、『消費者を代表して』などと大きなものに寄りかかったり、『好き/嫌い』を世間一般の『良い/悪い』にすり替えて断罪したりできる。酷評自体が悪とは思いませんが、楽な方法ばかり選ぶ人は『どうなの?』と思いますね」
ではお店に対して不満をぶつけたいときは、どうするべきなのか。
「一つは、酷評するにも芸を持つこと。ネット上で負の感情を垂れ流されては空気も殺伐としてきますが、文章として面白おかしく表現することができれば、周囲も嫌な気はせず、共感する人も増えるはず。自分に正義があると思い込むと、相手も自分も追い詰めることになるので、ユーモア精神を持つことが大切です。あと『その場で不満を伝える』というのもアリ。ただ、これも品よく実践できる人は少ないので、大半の人は顔が真っ赤になっちゃったり、途中で噛んじゃったりして、恥ずかしい思いをすると思いますが」
どちらの方法も簡単ではないが、「感情を垂れ流す前に一度踏みとどまってほしい」とマキタ氏。
「ネットの悪口は『便所の落書き』なんて言われますが、誰しもガスは溜まるし、排泄は必要です。要は便所も使い方で、『一歩前へ出てキレイに使おうよ』というのが僕の意見です。ただ全員がマナーを身につけてユーモア満点の酷評を始めたら、僕も仕事がなくなって困るんですけどね」
【マキタスポーツ氏】
1970年生まれ。ミュージシャン、俳優、コラムニスト。槇田雄司名義の著書に『一億総ツッコミ時代』など。近著は『すべてのJ‐POPはパクリである』(扶桑社刊)
取材・文/古澤誠一郎 高田純造 山脇麻生 鼠入昌史・廣野順子・佐藤未来(オフィスチタン) 安田はつね(本誌)撮影/菊竹 規 山川修一・難波雄史(本誌)
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