金慶珠vs周来友「“反日ブーム”に沸く中・韓の本音」

ニュースでは連日、日中韓の関係悪化が報じられ、書店には関連書籍のコーナーが設けられる――空前の“嫌韓ブーム”が世を席巻している。冷静さに欠ける報道や言説も飛び交う中、日本に住み、かつ韓国・中国にもルーツを持つ有識者はこの現象をどのように捉えているのか。論客として知られる金慶珠氏と周来友氏を招き、1時間半に渡り激論を交わしてもらった。

金慶珠氏(以下、金):日本との関係が冷え込んでいる中韓ですが、日本人の反韓・反中と嫌韓・嫌中には明確な違いがあると思います。いわゆる反韓・反中というのは、領土の問題だとか歴史問題などに対する政策や態度に対する批判が根幹にある。一方、嫌韓・嫌中となると、そういった政策や理屈は飛び越えて、とにかく『相手は嘘つきだ』などと、国民や国家に対する嫌悪感や不信感が先立っていて、断交せよという短絡的な感情をぶちまける非難に終始しています。

周来友氏

周来友氏

周来友氏(以下、周):中韓に対する日本人の意識に微妙な違いがあると僕は感じています。両国はかつて共に日本に侵略されたというが、中国は8年間もの年月をかけて戦いました。しかし韓国はというと、あっけなく植民地となった。安重根みたいな人はいたにせよ、日本に対して殆ど無抵抗だった。現在のパワーバランスからしても、日本の右派は中国に対しては『敵視』、韓国には『軽蔑』という意識を少なからず持っているんじゃないでしょうか。

金:ただ、かつては嫌韓より嫌中の方が激しかったですよね。2005年の反日デモや毒餃子事件、2008年の北京オリンピックの前後など、とにかく中国バッシングが激しかった。しかしそのとき私は、『ゆくゆく矛先が韓国に向いていく』と思っていました。まさにその通りになったわけですけど、私がそう思った理由は、誰かを感情的にバッシングするという行為は一種のいやがらせにも似ていて、相手が自分よりも弱い場合にエスカレートしていく可能性が高いからです。日本と中国の力関係は明らかに逆転しつつある。ところが日本と韓国の力関係は、その差が縮小されたとはいえ、日本優位の立場に変わりはない。

周:韓国だって日本に対して強硬じゃないですか? 意外かもしれませんが、同じく日本との間に歴史認識や領土問題を抱える国として、中国政府は韓国の対日政策をよく研究し、参考にもしているんです。1998年『日韓共同宣言』が文書化された。当時の江沢民主席はそれに大きく嫉妬したと言われている。中国とも同様の共同宣言をするように日本側に打診したんだけど、拒否されたという経緯があるんです。中国からすれば、『なんで韓国だけ?』という思いだった。面子が潰されて面白くないわけです。そしてその後は反日教育を展開していくことになります。実はそこにも韓国の存在が影響してる。中国人民に『なんで韓国のような小国よりも中国は弱腰なんだ』ということにならないように、韓国が日本に対して強く出ると、中国もそこに追従しなければならないというつらさも抱えてきた。

◆中・韓の「対日包囲網」は機能しない

――そうしたなか、最近では中韓が日本との歴史問題で連携する動きも見られ、「対日包囲網」などとも言われています。

金:しかしそれはあくまで部分的な関係であって、別に中国と手を組んで日本をおとしめようというものではないですよ。そもそも韓国外交が日本か中国か、どちらか一方を選択しなければならない話でもない。アメリカに対しても韓国なりの戦略を持って、信頼関係を構築する必要があります。アメリカや日本の右派からすれば『北朝鮮も危ないし、中国も信用できないから、韓国は俺たちの側に付け』という論理なんでしょうが、韓国にしてみれば、そんな単純な中国包囲網的に乗っかる必要性はなく、独自の立ち位置を確保したいと思いがあるのはあたりまえ。

周:正直言って、中国と韓国は今は連携しているように見えるけど、はっきり言ってしまえば韓国は中国に取って取るに足らない存在です(笑)。もともとは見下してきた相手だし、最近では、中国での反韓感情も加速しているので、中韓の対日包囲網はうまく行かないでしょう。中国人は日本人のことをイメージで嫌っていますが、韓国人のことはビジネスなどの場面の実体験で嫌いになったという人が多い。それに中韓の間だって領土問題を抱えているわけだし、中国国内の朝鮮族もいずれ問題になるでしょう。

――どちらが正しいことはさておき、今の日中韓は三者が自分の言い分を主張することに終始しています。こうした状態は誰の得にもならないはずですが、急激に和解はできないにしろ、どんな打開策があるのでしょうか?

金慶珠氏

金慶珠氏

金:私は結局は交流の活性化しかないと思っています。日韓首脳のシャトル外交も2012年に李明博大統領(当時)が竹島を訪問して以降ストップしている。今の日韓関係は、こうした外交的冷え込みによって、これまで培った信頼関係の全てがまるで崩れていっているような雰囲気におちいっている。両政府の対立が国民の不安ムードをあおり、メディアの情報もまるで国民と国民が対立しているようなムードを煽っている。こうした状況を打開するためには、両国首脳がきちんと責任を果たすべきですね。

周:日中韓、すべての政治家に言えることですが、もっと相手の難しい立場を理解してあげることが大切だと思います。今まで日本が中韓に譲歩し過ぎたと思う日本人がいるかもしれないが、譲歩して主導権を握る外交戦略もあるわけです。残念なことに、中韓にはまだ譲歩できる余裕を持ってないし、日本もその余裕をなくしてしまった。結局それぞれの指導者たちによる相手の国を挑発するような発言ばかりが目立っています。それは全くの内向きのパフォーマンスなので、関係改善には何の役にも立ちません。早くアベノミクスが功を奏し、経済が回復され、日本全体が閉塞感から脱却して欲しい……。

◆日韓の関係は紆余曲折を経て進展していく

金:ただ、日本の閉塞感は経済的なものだけではないと思うんですよ。そもそも日本が目指してきたのは、基本的人権のもとでの価値観の多様性や自由を認める社会であって、金持ちや権力者が幅を利かせる社会ではなかったはず。それが今や、生活保護申請者は詐欺師呼ばわりされるなど、排外主義だけでなく自国民への弱いものいじめも起きている。『強い日本』を取り戻そうとする政治的なスローガンが富国強兵を強調するあまり、戦後の日本が築いてきた平和主義の価値観が蔑ろにされているような風潮はとても残念です。

周:日本も中国みたいにいっそのこと一党独裁にしてしまえばいいんじゃない(笑)。ある意味もうなってるのかもしれないけど。中国の人から見たら、今の日本の政治のあり方は非常にもったいない。せっかく民主主義の国なのに、事実上の自民党一党支配となっている。しかも昔のような党内のバランスが崩れてしまった。日本の今の有様を目の当たりにしたら、民主化を待望していた多くの中国人も『自由選挙っていっても結局あんなものか』といって幻滅するかもしれない。

金:確かに、今の日本政治には“権力の牽制”という力学が働かない状況にあります。野党再編などが模索されつつありますが、自民党の内部も含めて、健全な批判勢力が一定の政治的影響力を行使できるようになるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。ただ、日本社会には多様性に対する寛容や知的好奇心という先進性も同時に持ち合わせています。韓流ブームの場合も、日本人はただKポップを聞いて韓国ドラマを見て韓国料理食べて終わりというのではなく、言語とか文化を学ぼうとする姿勢があった。単なる消費ではなく、そこから新たな何かを生み出そうとする姿勢ですね。だから政治がうまくリードすれば、昨今の葛藤や摩擦からも、必ず何かを学び取ることはできると思っています。私が日韓の関係は紆余曲折を経ながらも、必ず進展して行くはずだと楽観視している最大の理由です。

周:金先生も日本人のこと褒めるんだ?(笑) 僕が思うのは、日中韓はもっと民間の交流を進めれば良いってこと。僕の実感ですが、3カ国はなんだかんだ言っても文化も容姿も似ているから、恋愛しやすいと思うし、実際に国際結婚はとても多い。相手を好きになっちゃえば、相手の国を好きになるまでは行かなくても、良いふうに理解しようとするだろうから、レイシズム的な応酬はなくなると思うよ(笑)。ちなみに僕の嫁さんは日本人です。

金:周さん、そういうビジネス始めたらどう? 日中韓の友好のためにも、いい人がいたら真っ先に私にも紹介してよね(笑)。

【金慶珠氏】
韓国に生まれ、幼少期を関西で過ごし、現在は東海大学教養学部・国際学科で教鞭をとる、日韓双方に長い在住経験を持つ論客。近著に「日本が誤解される理由」(イースト新書)などがある

【周来友氏】
1963年、中国浙江省紹興市生まれ。1987年に私費留学生として来日し、タレント・ジャーナリストとして活躍

<取材・文/日刊SPA!取材班>

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