交流戦名物!千葉ロッテ“挑発ポスター”生みの親を直撃
スタートから10周年を迎えたプロ野球セ・パ交流戦がたけなわだ。今年は史上初めてセ・リーグ球団の主催試合で指名打者制度を採用するなど、新たな試みも見られるなか、毎年この時期に登場する千葉ロッテマリーンズの“挑発ポスター”を楽しみにしている野球ファンも数多い。
時にシュールに、時にユーモア溢れる言い回しで、ファンはもちろんのこと、球界関係者の心にこだまする沢山のメッセージを送り続けてきた千葉ロッテのポスターの生みの親、コピーライターの渡辺潤平氏(37歳)が取材に応じてくれた。
「一連の物語は、’04年のプロ野球再編問題からはじまりました。新球団の楽天イーグルスの初陣が千葉マリンスタジアム(当時)で行われるということで、マリーンズが広告代理店数社に声を掛けて競合コンペが行われました。子供の頃からマリーンズファンだった入社5年目の僕には、これぞ天職だ!って思えましたね(笑)」
数ある候補作品の中から、見事マリーンズに見初められた渡辺さんの作品は、当時のスポーツ界としては前例のない対戦相手をいじる“挑発ポスター”だった。
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「あなた達があれこれ話題を作っていた頃、ボク達は黙々とカラダを作っていました。」
「ささやかですが、黒星をプレゼントさせていただきます。」
「東北に春が来るのは、おそい。」
プロ野球チームの日程告知ポスターの特性を「掲載する媒体は膨大にあるから、点ではなく面で展開する面白さを表現したい」と見抜いた渡辺さんの読みは見事に当たり、新生楽天イーグルスを迎える開幕戦の告知ポスターは、テレビやスポーツ紙に大きく取り上げられた。
「今でこそ定着した“挑発ポスター”ですが、キャンペーンが立ち上がったばかりの頃は、正直、おっかなびっくりでした」。渡辺さんは史上初の交流戦ポスター作成に挑むにあたり、ボビー・バレンタイン監督(当時)の笑顔をメインビジュアルに起用した。恒例となった交流戦ポスターの歴史は、こうして幕を開けたのだった。
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◆バレンタイン監督が挑発!
大リーグ・メッツの監督時代には、退場処分となったあとも変装してベンチに入り続けた逸話を持つバレンタイン監督をメインに据えたことで、活字だけだとキツく見える言い回しに、ユーモア感あふれる温もりが生まれた。前例がなかった“挑発ポスター”のユーモアある世界観は、さかのぼること10年前から、少しずつ浸透しはじめていった。
手探り状態だった渡辺さんが確かな手応えを感じたのは、2005年の日本シリーズだった。
「前の年に球界再編が起きて、ファンの誰もがプロ野球の未来に不安な気持ちを抱いていたと思うんです。そういう不安を拭いつつも、ぼくは31年間待ち続けていたロッテファンに向けて、メッセージを発信したかったんです」
JR海浜幕張駅に連張りされたポスターの前には、連日の人だかりができた。ポスターの前では、涙ぐむファンの姿があった。その光景を目にした渡辺さんは、思わずもらい泣きをしたという。マリーンズファンの涙する姿に涙する、マリーンズファン。
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『ひしめくスタンド。地鳴りの歓声。最高のチームメイト。頼もしいスタッフ。美しいグランド。そして、最高のライバル。僕たちはいま、日本でいちばん幸福な野球選手だ。』
「過去最高の自信作はどれですか?」という記者の意地悪な質問に、間髪いれずこの一枚を挙げた渡辺さんは、マリーンズファンだった自らの想いを、タイガースとの日本シリーズに挑むファンに託した。「学生時代はマリンスタジアムでバイトするほどロッテが好きでしたので」。
本物のファンが紡いだ珠玉のメッセージは、静かに、しかし確実に、野球ファンの心を次々と射止めていった……。
球界再編元年。2005年の千葉ロッテマリーンズは、レギュラーシーズン2位ながら、プレーオフでソフトバンクホークス、西武ライオンズを下し、日本シリーズでは阪神タイガースを相手に一気の4連勝で日本一まで登りつめた。
「“挑発ポスター”の評判は、どうしたってマリーンズの勝ち負けに左右されてしまう」と冷静に語るコピーライターの渡辺さんにとって、2005年のマリーンズは最高の形で応えたこととなる。こうして今や日程告知という本来の役目を大きく逸脱して、名物として定着した“挑発ポスター”は、翌年以降も数々の話題を振りまくようになった。
※明日は2007年から今年までのポスターを一挙公開。後編もお楽しみに!
<取材・文/小島克典(スポカルラボ) 撮影/遠藤修哉(本誌)>
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