更新日:2016年05月20日 14:51
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富野由悠季氏の「新作ガンダム」に原発事故が与えた影響

 この秋、テレビ放送がスタートする『ガンダム Gのレコンギスタ』(以下『G-レコ』)。ガンダム生誕35周年を記念して制作されたファン待望の新シリーズだ。本作で総監督を務めるのは同シリーズの生みの親・富野由悠季。御年72歳、キャリア50年を超える富野監督は、35年のときを超えて新たなるガンダムに何を託すのか? そして、「従来のガンダムファンには理解できない作品」「あなたのために作っていない。お子さん、お孫さんに見せてください」といった挑発的な発言の真意とは?
富野由悠季氏

富野由悠季氏

――『G-レコ』はガンダムファンの子供や孫の世代に向けた作品ということですが……。 富野:今の20代、30代、40代以降には期待できない。最近のニュースを観ていてもわかるんじゃない? あれで政治家だって言うんだから(笑)。あの人たちの年収が200万~300万円なら許せる。でも、そうじゃない。そこにお金を払うことを許しているのは我々納税者だから、これは皆アホってことです。そこを変えることができるのは、子供たちをおいてほかにありません。 ――『G-レコ』の構想段階で東日本大震災と福島第一原発の事故が起こりましたね。この2つの事件は作品に影響ありましたか? 富野:影響はあります。福島の事故で大人たちに期待できないことが、はっきりしました。事故を起こしても後処理ひとつできない。そんなことは最初からわかっていたはずなのに。この間も地元住民が大反対しているにもかかわらず、どこかの知事が「(中間貯蔵施設の件は)何とか説得したい」とか平気で言っていました。僕に言わせれば「バカなんじゃないの?」って話です。 ――『∀ガンダム』の頃から「持続可能型のエネルギー政策に切り替えないとまずい」といった話を繰り返してきましたね。そのあたりのことは福島第一原発の事件後、話しやすくなったのではないでしょうか? 富野:それも1年程度のことでしたね。今では原発に関する言葉は死語に逆戻りしています。コンビニは24時間営業だし、東京では街中の街灯が灯っている。街灯をつけないと犯罪率が上がるなんていうバカもいるけど、江戸時代の犯罪率が今よりも高いとは思えない。それでも20世紀の暮らしに慣れてしまった我々大人は街灯を消すことができないでいる。僕にしても今では自粛という観念を持てずにいます。それくらい僕たちはだらしがないんです。 ――だからこそ子供に向けて『G-レコ』を作った? 富野:この作品を観た子供たちが10年後にアクションを起こす。そのための種はまけたと思います。台詞にはしていないけど、問題意識はすべて並べています。例えば、本作に登場する宇宙エレベーターもそのひとつです。地球と宇宙を7万kmのケーブルで繋ぐことに、どの程度の現実感があるのか? さらに言えば宇宙エレベーターの維持管理をどう行って、投資した資金をどう回収するのか? そういう科学者が置き去りにしている問題に目を向けられる人間が『G-レコ』の視聴者から育ってくれたら本望です。 ※8/26発売の週刊SPA!では、富野監督が新作ガンダムで「脱ガンダム」を成功をした、と大いに語っている。ぜひ、本誌でご確認いただきたい。 <取材・文/渡辺トモヒロ 撮影/吉場正和>
週刊SPA!9/2号(8/26発売)

表紙の人/大谷翔平

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