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中国が台湾を併合。沖縄は中国の思惑通り「独立」へ――2020年を予測する「最悪のシナリオ」

 南シナ海でフィリピンやベトナムと領有権を争っている岩礁を、中国が着々と埋め立てている。建設された人工島には滑走路や自走砲などの武器まで配備されており、やりたい放題。アメリカのオバマ政権も、カーター国防長官を通じ、中国軍制服組トップに埋め立て停止を求める異例の展開となった。
中国はベトナムから奪った南沙諸島の岩礁を人工島に改造

中国はベトナムから奪った南沙諸島の岩礁を人工島に改造した。左上から’12年3月、’13年2月、’14年3月、’15年5月上旬撮影のもの

 こうした中国の海洋膨張に早くから警鐘を鳴らしていたのが、中国の政治・軍事戦略研究者の平松茂雄氏である。そもそも中国の南シナ海への関心は、近年になって始まったものではなく、初代指導者の毛沢東にまで遡るという。 「南シナ海には、今問題になっている南沙諸島の北西に、西沙諸島というのがあります。中国が台湾から奪った永興島という西沙諸島で最大の島では、’71年の段階で2000~3000tの船が停泊できる埠頭と、数棟の建造物ができていました。’74年には、ベトナム戦争で南ベトナム軍が疲弊していた隙を狙って、西沙諸島の永楽群島に軍を派遣して占拠しています。これらの行動は、毛沢東が指導者だった頃のことです」  中国は、毛沢東の遺志を固く受け継ぎ、毛沢東が描いた「偉大な中華世界」を再興するためのロードマップにのっとって軍事・外交戦略を進めている。つまり、平松氏によれば、中国の今後の動きを予測するには、毛沢東を知ることがなによりも大事なのだという。
東南アジア諸国では反中デモが頻発している

東南アジア諸国では反中デモが頻発している

◆中国共産党が100周年の2021年に向け活性化! 「毛沢東の悲願は、台湾統一でした。国共内戦を戦ったライバルである蒋介石が逃げ込んだ先の小さな島を、彼は何度も攻略を試みて果たせませんでした。中国共産党創立100周年にあたる2021年、毛沢東の後継者たちは、台湾の台北で記念の節目の年に祝杯をあげるための行動を、これから活発化させるはずです」  しかも、老獪な中国共産党の台湾統一工作は、軍事面に限らない。台湾人による自発的な「統一」のシナリオも有力だ。 「’96年に中国が台湾にミサイルを向けたとき、アメリカは空母2隻を台湾に派遣して守りましたが、いまの軍事バランスを考えれば、もうアメリカは東シナ海に空母機動部隊を入れられない。それを台湾人も当然感じているわけで、軍事的侵攻を受けずとも、自ら中国に擦り寄っていってしまうこともありえます」  台湾が中国の手に落ちれば、日本はどうなるのか。 「南シナ海は、現時点ですでに中国の支配下に置かれつつあるわけですが、さらに台湾が中国のものになればこの海域を通るシーレーンは自由に使えなくなります。おおかたの船は通してくれるでしょうが、特定の国の船に対しては、意地の悪いことをするでしょう」  中国にとって、日本ほどいじめがいのある国は他にない。そう言って平松氏は苦笑いしたが、日本の領土・領海について、さらに恐ろしい未来予測が飛び出した。 「毛沢東が掲げた『偉大な中華世界』の領域には、日本の南西諸島(沖縄・奄美)全体も含まれています。中国が対外進出のために軍を再編成した4つの『戦略区』のうち、東シナ海を担当する『東部戦略区』の管轄区域は、南西諸島の東側まで。今、尖閣諸島の領有権をめぐって日中は紛争になっていますが、ああいうことが沖縄でも起こるとイメージしてください」  沖縄には日本の防衛政策や米軍基地に反対する立場から、「沖縄独立」を訴える人々もいる。平松氏によれば中国の思うツボだという。 「このまま無策を通せば、いずれ日本は北海道、本州、四国、九州の、4つの島だけになってしまうかもしれませんよ!」  79歳の老人に、先の心配をさせないでほしいと、平松氏は寂しそうに笑った。 【平松茂雄氏】 中国の軍事研究者。著書『毛沢東と鄧小平の「百ヵ年計画」』では、毛沢東が打ち立てた国家百年の計に忠実に沿ったからこそ、中国は発展を遂げられたと強調する 写真/時事通信社 ― 2020年日本を襲う[最悪のシナリオ] ―
毛沢東と鄧小平の「百ヵ年計画」

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