下流自動車評論家マリオ高野「豊田章男社長は単なるボンボンではなく、尊敬に値する人格者である」
東京モーターショー2011が始まりました!
一般公開は12月3日から11日までですが、このマリオ高野、下流自動車評論家とはいえ「報道関係者招待日」に堂々と入れるプレスパスを持っているので、僭越ながらみなさんよりも先に見物させていただいております。プレスパスといっても、名刺さえあれば誰でももらえると言っても過言ではないほど簡単に入手できるものなので、毎回、子ども連れがいたりしますが、今回は子どもや退屈そうにしている奥さんの姿は見られませんでした。
開催場所は、前回までの幕張メッセではなく東京ビッグサイトです。前回は、リーマンショックの影響などで輸入車メーカーがごっそり不参加となり、広い幕張メッセが悲惨なほどスカスカになってしまったので、きっと懲りたのでしょう。ドイツとフランスのメーカーは戻って来てくれたものの、フェラーリやランボルギーニ、アルファロメオなどのイタリアのメーカーは今回も不参加です。
東京モーターショーは、田舎では見る機会がゼロに近い、これらイタリアの高級車を至近距離でジックリと拝めるチャンスなのに、またしてもそれが潰えてしまい残念でありました。
あと、これは憶測ですが、東京ビッグサイトは幕張メッセよりも利用料金がすごく安いのだと思います。自分は昔、アポロ出版というブラック系の出版社で働いていましたが(その後、倒産)、東京ビッグサイトは零細企業のアポロ出版でさえ自社主催のクルマのイベント(オートギャラリーといいました)を行えたほどなので、たぶん相当安いのでしょう。
会場に入ってみると、やはり今回もクルマが少ないという印象です。しかし、マスコミ関係者の数は例年と変わらない感じで、どのブースも要人の演説が始まるとメインステージがまったく見えないほどの大賑わいとなりました。
演説を終えた後の自動車メーカーの社長さんには、緊急来日した海外のスーパースターか、汚職事件を起こした政治家のようにマスコミが群がります。展示されるクルマの内容は事前に知らされている(クルマ雑誌は撮影も事前に済ませている)し、それ以外のサプライズ的なニュースが発表されたワケではないのですが、報道陣の加熱ぶりは凄まじいものがありました。わずかなつぶやきも逃すまいと、いわゆる「ぶら下がり」インタビューが実施される様子が見られて楽しかったです。クルマはともかく、マスコミ関係者の数と気合いの入った取材ぶりを鑑賞できたことにより、日本の自動車産業はまだしばらく大丈夫だろうと、なんとなく安心したのでありました。
この様子こそ、一般の人に見せることができたらもっといいのに、と思います(「USTREAM」などでは一部ライブ中継されましたが)。各社の要人演説は、1社あたり10分以内には終了しするので、マスコミが全社の演説シーンをすべて取材できるよう、だいたい15分おきぐらいにスケジュールが組まれているのですが、フォルクスワーゲンの演説会が異様に長引いたため、集まったマスコミ関係者の多くがイライラする様子も鑑賞できました。
フォルクスワーゲン要人演説の30分後には、トヨタブースで豊田章男社長の演説が予定されていたので、できれば早めに切り上げてトヨタブースへ移動したい人が多かったのです。しかも、トヨタブースはワーゲンブースから早足で歩いても5分以上かかる西館にあり(ワーゲンは東館)、人手が少ない媒体は気が気じゃなかったことでしょう。
ワーゲンブースを途中で離脱したくても、プレスキットと呼ばれる資料が配られるのは演説が終わってからなので、それまでは離れられないという始末の悪さです。プレスキットを後回しにするという手もありますが、プレスキットは売り切れてしまうことが少なくないので、後回しにすると手に入らなくなる危険を伴います。そんな事情もあり、フォルクスワーゲンブースのプレスキット配布場は、まるでオイルショック時のトイレットペーパー売り場のような混乱をきたしました。人間の密集度とイライラ度の高さは、都心部の朝の通勤ラッシュ時のようだったとも言えます。
自分は、フォルクスワーゲンの直後に予定されていたアウディとポルシェの要人演説の鑑賞を諦めることにより、ワーゲンのプレスキットを確保しつつ、豊田章男社長の演説に間に合わせたのでありました。個人的にアウディとポルシェは大好きだし、新型ポルシェ 911など、注目に値する展示車がたくさん出ていたので、これらの発表の瞬間をスルーしてしまったのは沈痛の極みでしたが、業務上、トヨタブースでの演説会は1秒たりとも聞き逃すワケにはいかないので(当日アップするWeb記事用の原稿を書くため)、このような仕儀と相成ったのでした。
そんな感じで苦労してたどり着いた豊田章男社長の演説は、思いのほか聴き応えがあってビックリ! 豊田章男社長は単なるボンボンではなく、尊敬に値する人格者であると、マジの本気で実感しました。玉音放送のように、聞いたその場で思わずひれ伏したくなるような名演説だったのです。ここでその全文を書いてもイマイチ感動しないと思うので書きませんが、何というか、言葉の一つひとつに気持ちがこもっており、聞き手の心にグッと突き刺さる何かがあったのでした。ヒトラーや小泉純一郎氏みたいな迫力系ではないのですが、演説で人を惹き付けるリーダーは、それだけで貴重だと思います。これこそ地上波とかでライブ中継したら良かったのにと思いました。
というわけで、今回の東京モーターショーは、基本的にエコカー系の展示車ばかりであまりドキドキはしませんが、比較的こじんまりとしていて見やすいので、クルマを見るのが好きな人はきっと楽しめるでしょう。
ちなみにコンパニオンは、スズキブースがオススメです。
美女でめぐる東京モーターショー2011(https://nikkan-spa.jp/100502)
取材・文・撮影/マリオ高野1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。その後、群馬県太田市へ移住し、現在は太田市議会議員に。X(旧Twitter):@takano_mario
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