長瀬智也×宮藤官九郎の地獄対談「もともとロックはバカバカしいまでに過剰なものだった」
先日、公開延期が発表されたが、宮藤官九郎監督の最新作『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』は地獄を舞台にしたコメディ映画という謎に満ちた作品だ。主演は宮藤作品には欠かせない男、長瀬智也。初タッグを飾った『池袋ウエストゲートパーク』から15年、ゆるぎない信頼関係で結ばれた二人は、この荒唐無稽とも思える作品をどのように完成させたのか?
宮藤官九郎監督、長瀬智也主演の映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』。残念ながら公開延期になってしまったが、世界初の「爆笑地獄コメディ」という新しいジャンルを確立した“宮藤ワールド”炸裂のロック色が強い作品だ。今回の対談では、長年の名コンビによって、饒舌でロックなトークが繰り広げられた。
――5年ぶりのタッグとなる今回の作品ですが、きっかけは?
宮藤:もともとロック映画を作りたいっていう気持ちがすごく強かったんです。けど今、夏フェスに来るような若者にとってロックって言うと、涼しげな顔でTシャツを着て抽象的な言葉で歌う音楽でしょ。
長瀬:草食なんですかね。
宮藤:そっちが主流だと思うんですが、もともとロックはバカバカしいまでに過剰なものだったと思うんです。オジー・オズボーンとか。それを今やったら「珍しい」って思ってもらえるんじゃないかって。
長瀬:逆に新鮮ですよね。
宮藤:KISSとかAC/DCとかの歌詞やタイトルを見ると、だいたい「地獄」が出てくるんですよ。ロックの人はみんな「地獄」を意識しているんだなっていうのがまずあって。ロックと言えば、地獄かなぁと。
長瀬:たしかに(笑)。
宮藤:それから、ジャック・ブラックの『テネイシャスD~運命のピックをさがせ!~』なんか観ていて、「あんなふうに顔で喜怒哀楽が表現できる役者はなかなかいないよなぁ」と思っていたんだけど、日本には長瀬くんがいるじゃないかと(笑)。温めてたわけじゃないけど、今回はものすごく王道で、長瀬くんでやるならこれだろうっていう、ストレートなことをやったつもりです。
長瀬:僕も宮藤さんと同じで、ロックってやっぱりロックスターが「顔」で演奏するものだと思うんですよ。ステージに上がったらとことん盛り上げて、KISSのように「俺たちは地獄からやってきたんだ!」みたいな、自分たちが入り込んでいる感じで客を音楽の世界に導いていく、という。それは同時に役者にも言えることでもあって、セリフしかない状態から動きをつけたり表情をつけたりして、見る人の違和感をなくすことがきっと役者の仕事だと思うんです。だから台本を見たとき、何の説明がなくても監督のやりたいことが一発でわかりました。
――宮藤さんが、役者として長瀬さんを信頼している部分はどのあたりですか?
宮藤:自分ではことさら作品でメッセージとか言いたいこととか持ってないつもりなんですけど、それでもやっぱり自分が出てしまう部分っていうのがあって。そういうときに誰の口を借りて言ってほしいかっていうと、長瀬くんに体現してもらうのが一番しっくりくることが多いんですよね。なにより彼の演技が好きだし、たとえば『うぬぼれ刑事』で泣いちゃう場面とか、『タイガー&ドラゴン』の高座で立ち上がっちゃう場面とか。まだまだ誰も開けていない引き出しがいっぱいあるんですよ、長瀬くんには。
――長瀬さんは、役づくりというより、ほぼ自然に役にシンクロできた感じですか?
長瀬:そうですね。監督が僕に言ってほしいメッセージというのを僕はもうわかっているから。そこに行くまでの道順を作っていくっていうのが、いつものスタイルですね。
※このインタビューは2/2発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
<取材・文/中村裕一>
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