高校生に占拠されていたセンター街のファーストフード店
当時の高校生たちは、渋谷のどんな場所に“溜まって”いたのだろうか? 話を聞いていくと、やはり大手ファーストフードチェーンの名前が多く挙がった。
髪色の明るい女子高生がたむろしていた渋谷のファーストフード店内(取材者提供)
当時、渋谷にあったファーストフード店の多くにはそれぞれ通称があり、東急ハンズ近くのマクドナルドは「ハンズマック」、そのすぐ近くのファーストキッチンは「ハンズファッキン」などと呼ばれ、「いまハンズマックには誰々たちがいる」といった具合に情報が共有されていたという。
そして、どこよりも“溜まり場”として名前が挙がったのが、現在はバーガーキングになっている場所にあったセンター街のファーストフード店だ。こんな証言が聞かれた。
いまの彼女たちは30歳前後。どこで何をしているのだろうか
「(2000年代前半)当時のそこの2階席は、ほぼ毎日、渋谷で遊ぶ高校生たちに埋め尽くされてました。行って誰も知り合いがいないなんてことはまずなくて、5テーブルくらい飛び越えて大声で会話するなんてこともザラ。フラっと入っちゃった人は居心地悪かっただろうし、店員さんも大変だったと思います。
なんせ、ガラの悪い高校生が何十人もタバコ吸って、注意されてもゲラゲラ笑って居座ってるわけですから。もっといえば、店に荷物を置いて別の場所に遊びに行くなんてことも普通でした。最悪ですね……。あそこは、まさにセンター街が高校生の場所であったことの象徴だと思います」
高校生たちは、店内だけでなく店の前にも溜まり、さらに当時のセンター街では10メートルごとに立ち話する高校生の集団がいたというから、現在の人が流れるように歩き続けている渋谷センター街、いやバスケットボールストリート(2011年に改名)の雰囲気とは大きく異なるだろう。
居酒屋「L」、カラオケ「G」…高校生が堂々と飲んでいた時代
前述の話にも出たように、現在の渋谷で“不良”と思しき高校生が路上に溜まっている光景を見かけることは、皆無といっても過言ではない。
今回話を聞いた当時の渋谷の高校生たちの話をもとに分析すれば、
――多くの大手ファーストフードチェーンや渋谷区自治体が禁煙化などの環境整備を整え、不良とされる高校生たちの溜まり場として機能する場所がなくなったことにより、そもそも街全体を基盤にしたコミュニケーションが成立しにくくなった――ということが、その大きな要因なのかもしれない。
また、ネット・SNSの浸透が副次的に若者たちにもたらしたコミュニケーションの仕方や価値観の変化、そして社会全体の“監視強化”も見逃せないだろう。
当時の高校生たちは、
ちとせ会館にあった居酒屋「L」や
道玄坂にあったカラオケ「G」といった店に100人規模で集まって飲み会を行っていたようだが、現在のネット・SNS社会のなかで「渋谷のど真ん中で高校生100人が大酒を飲んでタバコを吸う」という“悪事”が大人たちにバレずに成立することは考えづらい。
その風景だけでなく、約15年のあいだに“性格”も大きく変えてきた渋谷という街。現在の「誰もが安心して訪れられる街・渋谷」には、今日も多国籍な幅広い世代の笑顔があふれている。 <取材・文/日刊SPA!取材班>