「下流老人」とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」のこと。「40代以下のほとんどは定年後、今の高齢者よりもひどい暮らしになることは試算上、目に見えています」(『
下流老人』(朝日新書)の著者で、社会福祉士の藤田孝典氏)
「平均年収が400万円以下の人の受給額は月額10万円前後となり、ほぼ確実に下流老人になります。さらに、今の人は持ち家率も低いので、そこから家賃も払わないといけない。たとえ年収が800万円程度あっても、貯金ができていない場合、老後は悲惨。長寿国であるだけにそんな生活が20~30年続く…」
何とも、救いのない話ではないか……しかし、下流老人になりやすい人の兆候は40代からすでに表れているというため、それを知ったうえで行動すれば、まだ対策があるといえよう。専門家に下流老人になる人の意外な特徴を15個挙げてもらい、40代男性200人に該当率をアンケートした。
当てはまる人は要注意!子育てで下流老人になる人の特徴
※40代男性200人への調査結果。1項目につき1点とし、8点以上であれば要注意。教育にお金をかけすぎて家を売るはめになったり、奨学金破産するなどのケースも後を絶たない
・家計維持には節約が第一だ 79%
・学資保険より良い保険があればそちらでも構わない 62%
・家族サービス時の予算は少しくらいオーバーしても構わない 56%
・子供に奨学金の説明をしていない 47%
・子供を持っても、自分の贅沢はできると思っている 47%
・妻がママ友付き合いをしている 43%
・子供に少しでも才能を感じたら、開花するまでお金をかけてもいい 37%
・嫁の愚痴は聞かない 26%
・妻が教育熱心である 18%
・子供に中学受験をさせている、またはさせる予定 12%
・第1子とそれ以降の子供に年齢差がある 10%
・叶えられなかった夢は子供に託したい 10%
・子供に(学校や職場を)「休んじゃえば?」「やめちゃえば?」などと言うことがある 5%
・高校生以上の子供に引きこもり、精神疾患がいる 4%
・子供の素行が著しく悪い 1%
節約が有効なのは低年齢まで。ママ友も要警戒【子育て】
※写真はイメージです
教育資金は、老後の経済状態に大きく影響する。教育資金問題に詳しいファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏は、意外にも「家計維持には節約が第一」(79%)という人が、下流老人になりやすいと指摘する。一体なぜなのか?
「子供が小さいうちはうまくいくのですが、塾通いが始まると食卓が別になり、節約の努力が効きづらくなる。節約疲れから燃え尽き、『節約しても思うように貯蓄は増えないし』などとお金に気を使わなくなった結果、散財するようになるケースが後を絶ちません」
それらの結果、「子供の大学進学が決まってから、奨学金を借りなければならないことに気づく家庭が増えています」。
言葉のとおり、「子供に奨学金の説明をしていない」人は47%と多め。そして「家族サービス時の予算は少しくらいオーバーしても構わない」(56%)という人は、程度にもよるが基本的に老後資金が不足しやすい。
また、次に警戒すべきは「妻のママ友付き合い」(43%)。
「若いママに対抗して若作りに走ったり、子供の習い事や受験に熱を上げて破綻するケースが多い」
その対策として、「夫は妻の愚痴を『そうだね』『大変だね』と聞き、任せきりにしないことが大事」だという。妻だけの問題ではない。
「40代は成功した人と、そうでない人の差が露骨に分かれるので、自分が叶えられなかった夢を子供に託そうとする親(10%)や、才能が開花するまで子供に投資する人(37%)が出てくる。上の子にお金を注ぎ込みすぎ、下の子まで回らず破綻する例もあります」
先手を打って資産運用していても危険なケースもある。
「’90年代末のITバブル期に子供ができた親は、相場がいい金融商品がブームだったため、実は学資保険に入っていない家庭が5割近くに達しています。預貯金より有利で堅実な学資保険を軽視した結果、今ではマイナス運用です」
とはいえ「学資保険より良い保険があればそちらでも構わない」という親は62%と多く、いまだ堅実味は感じられない。
そして、「晩婚で子供を持った40代や、第1子とそれ以降の子供に年齢差がある家庭(10%)は、老後破綻する可能性が高い」とも。
「決して晩婚や高齢出産が悪いのではなく、老後まで時間が限られていることが直視できず、子供のために切り詰めて生活のレベルを下げられない人が多いためです」
教育資金と老後資金は綱引きの関係。失敗すると、下流老人どころか親子共倒れになりかねない。
【畠中雅子氏】
ファイナンシャルプランナー。教育資金づくり、生活設計、住宅ローンなどのテーマで活動。共著『
子どもにかけるお金の本』(Como子育てブックス刊)など著書多数。3児の母
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