「LINEモバイル」は通信量難民の救世主になれるのか?
過去の事例はどうだろうか。米国で話題となったFBフォンの売れ行きが大不振だったように、メッセンジャーの雄であるFBでさえも、通信事業への参入は失敗に終わっている。
「ネット上のサービスを提供する企業が、通信事業に参入してうまくいった例はほとんどないです。まず1社でやることではないし、自社のことしか考えていない事業主が多いので、ビジネスとしてなかなか受け入れられない。FBが米国でFBフォンを出すと発表したときも大騒ぎになりました。これでiPhoneは駆逐されるといった記事もありましたが、冷静になるとFBフォンを持つ必然性がないから誰も買わなかった」
’15年の国内スマホ普及率は49.7%であり、人口の過半数がスマホを利用していない状況で、LINEはスマホの普及率向上を目論む。しかし、端末とSIMをセット販売するかどうかは未定だ。
「最初からLINEの端末で契約すると、あらかじめLINEも登録されているフルパッケージで提供するのか、従来のMVNOと同様にSIMだけの販売で、端末は自前で用意するのか、素人にもわかりやすいサポートをしないとシェアは伸びないでしょうね」
MVNO参入に対しては手厳しい法林氏だが、実は注目している新サービスがあると話す。
「『LINE Pay』は凄い可能性があると思います。ポイント還元率が高いだけでなく、プリペイド式なので、クレジットカードを持たない層や審査に落ちる人でも持てる。それで手数料を稼げれば巨大なビジネスになります。例えば、モバイルで500円かかるけど、それはペイで貯めたポイントで払えるなど、ペイとモバイルを結びつけて事業を展開すると可能性は広がるでしょうね」
今ではスーパーや家電販売店、プロバイダーなど200社以上が参入するMVNOだが、’16年はどんな一年になるだろうか?
「過当競争が始まって淘汰され、売却される事業者が出てくると思います。LINEのネームバリューには期待できますが、MVNO業界は勝負の一年ですね」
【法林岳之氏】
パソコンや携帯電話の評価や解説を手がけるフリーランスのITジャーナリスト。「できるシリーズ」など著書多数
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