更新日:2016年07月20日 23:14
スポーツ

“目の見えない人のためのサッカー”日本代表・寺西一選手「僕らのすごさも知ってくれると嬉しい(笑)」

“見えない”体験を通じて伝えることの難しさを知る

寺西一選手

寺西一選手

 寺西選手は’10年に日本代表に初選出以来、活躍を続けている。さらに選手活動と並行して、日本ブラインドサッカー協会に勤務し、ブラインドサッカーを通じて健常者と視覚障がい者の“混ざり合い”活動にも精力的に関わっているという。 「僕らプレーヤーにとっても、閉ざされた世界でやっていても意味がない。社会に積極的に参加して交流し、それで理解や応援されてこそ意味があると思っています。晴眼者にブラインドサッカーを体験してもらうワークショップ『OFF TIME』もそんな意図で実施しています。目が見えない状況で声だけを頼りに体を動かす。それを通じてただ楽しいという以上の気づきを得てほしい。そして、視覚障がい者に限らず自分と違う人とコミュニケーションすることの大切さも知ってほしい」  というわけでイベントの様子を取材させてもらった。参加者は男女合わせて13人。健常者がいきなり見えない状況でボールを蹴ることは難しいので、まずはアイマスクをした状態でコミュニケーションを取ることから。2人一組になり準備体操の動きを見えている人がアイマスクをしている人に言葉で教えたり、全員がアイマスクをして同じ血液型でグループを作ったり。2チームに分かれてボールを使ったゲーム、最後に目標のポールにボールを蹴る……というのが大まかな流れだ。  と、言葉で書くと簡単そうに感じるが、実際はほとんどの参加者が大苦戦。特に、アイマスクをしている“見えない”相手に状況を的確に伝えることが難しいようだ。参加者の男性は「声だけでコミュニケーションを取ることは思った以上に難しい。情報を伝えるだけではなく、相手の考えも聞こうという姿勢が大事だと思いました。普段の生活にも生かしたい」と話してくれた。見えない状況を体験することで、コミュニケーションの重要性を再認識できるのだ。実際に「OFF TIME」を研修に取り入れている企業もあるとか。 「体験を通じてブラインドサッカーに興味を持ってもらい、僕らのすごさも知ってくれると嬉しい(笑)。そして一つのスポーツとしてブラインドサッカーを見てほしいですね。どんなコミュニケーションでどんなプレーをするのか、それを見ると普通のサッカー観戦にはない楽しみを味わえると思います」  リオ出場は惜しくも逃したが、’20年の東京でのブラインドサッカー日本代表の活躍が楽しみだ。 <OFF TIME> アイマスクをした状態でコミュニケーションを取りながら体を動かすワークショップ。原則毎週木曜夜、都内の体育館で開催中。参加費は4000円。企業向けの「OFF TIME Biz」もある 【寺西 一選手】 NPO法人日本ブラインドサッカー協会。’90年、広島市生まれ。’04年にブラインドサッカーと出合い、その自由度に魅了される。’10年、代表初選出。’13年には代表初得点を挙げるなど主力として活躍。松戸・乃木坂ユナイテッド所属 ― 「障がい者スポーツ」激アツ観戦ガイド ―
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