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学費のために“バイト漬け”となる貧困大学生。のんびりと過ごすキャンパスライフは夢のまた夢…

なぜ大学の大事な時間を奪ってでも学費をとるのか

 全共闘の学生による「東大安田講堂事件」が起きた1969年から現在にかけて、国公立大学の学費は約44倍に。一方で、物価は約3倍ほどにとどまっている。 「なぜ大学の大事な時間を奪ってでも学費をとるのかと言うと、企業にとって大学は労働力の草刈り場でもあるわけじゃないですか。いま企業や国が求めている労働力は、大学で身につけた知識もどんな労働をするのかも関係ありません。もっと単純に、借金を返せる人間というか、返そうとする人間を求めている。住宅、教育、自動車…何10年ものローンを組んで、それを返すために働きつづける人間です。借金を返せなかったら人でなしと言われるわけですからね」  奨学金を借りていない場合でも、親がなけなしのお金で学費を払ってくれたことは、借金と同じで学生にとって負い目になることがあると栗原氏は続ける。 「せっかく親がこれだけお金を払ってくれたから、ちゃんと就職して、それ以上のお金を稼げるようにならなくちゃいけない、だからそのための勉強をしなきゃいけないと思ってしまう。こうなると、学生の思考は勉強=就職になって、働くためだけに勉強するようになる」  そして、新卒で非正規4割、新卒の時点で失敗したら正社員にはなれない、という“常識”を何度も聞くことによって、無意識のうちに恐怖心が植えつけられる。 「新卒じゃなくても正社員にはなれますが、就活で追いつめられる学生ほど、その恐怖感に縛られて、ここで就職できなかったら終わってしまうと感じてしまう。これを一度でも味わっちゃうと、生殺与奪が奪われてしまうわけです。カネを返すため、ご恩を返すためには何でもしますという思考に陥ってしまう。今の企業と国が求めている労働力の在り方はこれで、大学は、学生を借金漬けにして働かせるための教育を4年間で施しているのではないでしょうか」 【栗原康】 1979年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科・博士後期課程満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)で紀伊國屋じんぶん大賞2016第6位となる <取材・文/神田桂一 北村篤裕>
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