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オリンピック柔道で金メダルを獲れる限界年齢は何歳?

近年のプロボクシング・総合格闘技王者は高齢化している

 近年は運動生理学の進歩や高質サプリメントの普及により、スポーツ選手の競技寿命が格段に延び、30歳代後半のボクサーなど珍しくなくなりました。昨年「世紀の対決」を行ったフロイド・メイウェザーは38歳、マニー・パッキャオは36歳でした。  さらに驚くべきことに、バーナード・ホプキンスは14年4月に49歳3カ月の史上最年長でWBA世界ライトヘビー級スーパー王座を獲得しています。  日本でも今年4月に世界スーパーフェザー級王座から陥落した内山高志は36歳でしたが、これは昔だったら想像もつかない超高齢王者です。60年代に国民的スーパースターだったファイティング原田が24歳で栄光の世界バンタム級王座から転落した後に、同い年の輪島功一は25歳でプロデビューしました。輪島が76年に32歳で3度目の世界スーパーウェルター級王座に返り咲いた時には「中年の星」と言われましたが、現代では32歳の世界王者など珍しくもありません。スーパーフライ級王者河野公平は今年36歳、バンタム級王者山中慎介も今年34歳になります。ライトフライ級王者八重樫東も今年33歳になりました。30歳の村田諒太(ロンドン五輪ミドル級金メダリスト)は「若手」とは言えないまでも、せいぜい「中堅」の部類です。  総合格闘技でもランディ・クートゥアが43歳でUFCヘビー級王座に輝いており(45歳まで王座に君臨)、ダン・スバーンのように50歳を過ぎても現役を続けた(54歳で引退発表)著名選手もいます。  あらかじめ定められた特定の相手との1試合に向けて集中して調整を重ねるプロの格闘技では、相手の戦力分析に加えて作戦や心理戦が重要な要素であり、また試合時間も長くペース配分や駆け引きも勝敗を分けるため、老獪なベテラン選手が実力を発揮しやすい土壌にあると言えると思います。  柔道から総合格闘技に転向した吉田秀彦は「僕は柔道で通用しなくなった選手なんです。でも総合(格闘技)では、こうやって戦える……不思議な世界ですよね。もし、まだ通用するんだったら僕は柔道を続けていましたよ」と言っていました(INSIDE格闘技 近藤隆夫 2008年11月6日)。  K-1や総合格闘技で活躍したミルコ・クロコップは40歳にして、28歳の石井慧をTKOで返り討ちにしましたが、ミルコは「年齢などというものは単なる数字に過ぎない」と経験とスキルの重要性を語っています(ゴング格闘技 2015年5月号)。

五輪柔道史上最年長金メダリストは?

 さて、前置きが非常に長くなりました。本稿のテーマである柔道においては、実はさほど高年齢のチャンピオンは生まれていません。  まず、オリンピック柔道競技金メダリストの最年長記録を調べてみました。最年長は男子は前回のロンドン五輪の90㎏級の宋大男(ソン・デナム=韓国)の33歳118日、女子は08年北京五輪52㎏級の冼東妹(セン・トウマイ=中国)の32歳330日でした。意外なことにさほど高齢の王者は誕生していません。さらにメダリストまで対象を広げても男子はモブルド・ミラリエフ(アゼルバイジャン=08年北京五輪100㎏銅)の34歳169日、女子はデボラ・フラベンステイン(オランダ=08年北京五輪57㎏級銀)の33歳357日です。  つまり男子は33~34歳、女子は32~33歳がメダリストの上限年齢であることが分かります。男子でいえば日本で有名なウィレム・ルスカ(オランダ=72年ミュンヘン五輪重量級・無差別級金)が32歳、ダビド・ドイエ(フランス=00年シドニー五輪最重量級金)が31歳7カ月、アントン・ヘーシンク(オランダ=64年東京五輪無差別級金)が30歳6カ月で金メダルを獲っていますが、この上限年齢とほぼ一致します。世界選手権では79年無差別級銀メダリストのビタリ・クズネツォフが当時の報道では39歳でしたが、実は41歳であるという説がありました。ですが最近見つけたオリンピック関連のデータベースによると当時38歳10カ月ということになります。  日本人に限って調べると、男子の最年長金メダリストは内柴正人30歳54日(08年北京五輪66㎏級金)、最年長メダリストは32歳の誕生日前日にメダルを獲った野瀬清喜(84年ロス五輪86㎏級銅)。女子の最年長金メダリストは上野雅恵29歳209日(08年北京五輪70㎏級金)、最年長メダリストは32歳338日の谷亮子(08年北京五輪銅)となります。日本人についても世界と大差なく、30~32歳位がメダリストの上限年齢であることが分かります。
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高齢者の「達人伝説」は嘘なのか?
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