「立派なクズは、ネタにして金に換えれば良い」
生島:でも、それ「借用書あるある」ですよね。私も何遍も男の人にお金を貸しましたけど、一度も借用書は書いてもらわなかったなぁ。まあ、お二人に比べたら金額的にはしょぼいです。なので、あげたつもりで貸していました。中には返してくれたのもいたし。
西原:マリカちゃんは、えぐい記憶多そうだわ。
生島:17歳のときだったかな。私の財布から彼氏がこっそりお金を抜いているのを見てしまったときの絶望。あれは辛かった。でも、その時はその人が好きで失いたくないから、その場で咎められないんです。「お金欲しいんなら、ちゃんと言ってね」とか、誤魔化してしまう。でも、ちゃんと言わなきゃと思いやんわり言ったら「取ってねえよ、俺を疑うのかよ!」って逆ギレされて。いや、見たし(笑)。
花房:分かります。女にたかる男って、返す気がないんですよね。ただ私の場合、若い頃に良いセックスをできなかった、楽しい青春時代を送れなかったという鬱積した思いが小説を書く原動力になっているのは間違いない。今はそういう意味で「ネタを提供してくれたんだ」と思えるようにはなりましたね。そこに至るまでは、憎悪と殺意で毎日呪い続けていたし、自殺をずっと考えてました。
西原:私たちの救いはそこね。立派なクズは、ネタにして金に換えれば良い。
――何百万円も借金を背負う前に、誰かに相談したりしなかったんですか?
花房:友人には散々別れろと言われていました。でも、そういう時って、人の意見に聞く耳持てない。「この人しかいない」って思い込んでしまっているから。男は私にとっての「神」だったんです。
周りを見てても思うんですが、DVされたり、男に貢いでしまう女性って呼び寄せてしまう原因が自分にもあるんですよ。そこを指摘してくれる人がいるなら、耳をちゃんと傾けたほうがいい。もちろん、暴力振るう男が悪いのは当たり前なんですけど、毅然とした態度がいかに大事なことか、今になって分かります。なめられて、つけこまれて、とことんしゃぶりつくされるから。本物のクズ男は良心もないし罪悪感も抱かないから、女が追い詰められて自殺したって平気なんです。改心なんかしない。こちらが逃げるしかないんです。
生島:「この人しかいない」って思い込みは、大概間違ってますよね。世の中は広いですから、今、辛い目にあっているなら、誰よりまず自分のことを大事に考えて欲しいです。男は他にもいる!
西原:たまに漫画を見て、自分の人生振り返るじゃないですか。全員が赤ペン先生ならぬ、赤チンポ先生ですよ。
生島:赤チン…ポですか(笑)!?
西原:自分のあそこが真っ赤っ赤になってね、傾向と対策どころの話じゃないですよ。ただね、色んな教訓をくれる赤チンポたちだけど、現在進行形で「赤チンポ3人続いてるな」と思う人は、今すぐ自分の「男スカウター」が壊れてると自覚した方が良いですね。あなたの男選びは間違ってますから、誰かに客観的な意見をもらってください。
花房:クズにひっかかる女は、ブレーキが壊れてる車みたいなもの。普通の車なら止まれるところも、気がついたらぶつかるまで突っ走ってしまう。でも、故障を自覚すれば、後は直せば良いんですから。
生島:そしたら
次回は、「赤チンポ」からいかに逃れたのかを語りましょうか。
【西原理恵子】
1964(昭和39)年、高知県生れ。武蔵野美術大学卒。1988年、週刊ヤングサンデー『
ちくろ幼稚園』でデビュー。1997(平成9)年に『
ぼくんち』で文藝春秋漫画賞、2005年には『
上京ものがたり』『
毎日かあさん』で手塚治虫文化賞短編賞を受賞。『
女の子ものがたり』『
いけちゃんとぼく』『
この世でいちばん大事な「カネ」の話』『
生きる悪知恵』など著書多数。
【花房観音】
京都女子大学中退。2010年「
花祀り」で、第1回団鬼六大賞を受賞し、デビュー。映画会社、旅行会社などを経て、現在もバスガイドを務める。「
まつりのあと」(光文社新書)が絶賛発売中
【生島マリカ】
1971年、神戸市生まれ。最終学歴小学校卒。在日2世。複雑な血筋の両親のもとに生まれる。父親の再婚を機に13歳で家を追い出され、単独ストリート・チルドレンとなる。3度の結婚と離婚を繰り返し、2度の癌を経験。自分が死ねば、同じく天涯孤独になる一人息子への遺言を兼ね、文章を書き始める。2012年夏、真言宗某寺にて得度。著書に『
不死身の花―夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私―』(新潮社)