『あまちゃん』演出の吉田照幸監督「仕事で変わるためには、まず自分の短所を認めること」
――吉田監督にとって、人生で転機になった出来事はありますか?
吉田:やっぱり「あまちゃん」ですね。もともとドラマを作ることには興味がなかったのですが、ドラマをやってみたら面白くて。ただ、その転機は、小泉今日子さんとか、薬師丸さんとか、宮藤官九郎さんとか。あれも何かが降りてたんですよね。一大ブームになっていくっていう。一番最初にやったドラマが「あまちゃん」でしたから。そういう作品って、現場の熱量がすごいんですよ。ドラマや映画って、全員で一つの作品だけを作っている状態じゃないですか。その面白さを感じて、転機になったと思いますね。「こんなことって、起こるんだな」って、何かのピースがことごとくはまっていく感じは、今回の作品でも同じでした。
――自分が面白いと感じるものと、世間の人にウケる「笑い」にはギャップがあると思います。そこはどうやって溝を埋めていくのですか?
吉田:これは阿部寛さんとの関係に代表されるんですけど、基本的には阿部さんが「こういうことをやってみた」というのを、僕がキャッチするという形式です。僕がキャッチする基準は、自分が面白いと思うか、周りのスタッフが笑ってるかですね。現場で、どういう雰囲気になっているかというのを観察しています。特に女の子の反応は気にします、理屈じゃなくて直感で反応してるから。現場での判断は、そういうのを総合してやってますね。
――「笑い」を学んで、作品に落とし込むのは難しいことじゃないですか?
吉田:「笑い」のことは生瀬さんとあんちゃん(内村宏幸)、この2人から習いました。笑いって言うとボケたり、鋭い言葉のセンスだったり、どうしてもお笑いの人を見ていると思うけど、あれは特殊な才能でやってる人たちだからいくら勉強しようと思ってもできない。たまたま「笑う犬」が終わった直後で、内村さんが空いていて、そのときの内村さんの持ち味が哀愁だったんですよね。その上で生瀬さんに、最初カット撮りしてたら、「これだと間が生まれないから、笑いが生まれない。だから一気に撮ってください」って言われたんです。
それで今、僕はドラマを撮ってるときも、よっぽど長いシーンでも一気に撮ってるんです。カット撮りしていくと、間はあとで作らなきゃいけないんですけど、カットを割ると間にならなくて、その結果、笑いにならないんです。面白いことを言っているところが面白いんじゃないんだ、みんなが黙ったところが笑えなきゃダメなんだと。その結果、持ち味のクスクス笑うっていうことが生まれたんですよね。
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