もちろん昭和の言葉への解説も忘れない。「江夏の21球」「10・19」など球史に残る言葉や、「スーパーカートリオ」「サンデー兆治」などマスコミが生み出したニックネームなど、解説を読めば、当時を思い出す”懐かしワード”も並ぶ。 　また、「月見草」「負けに不思議の負けなし」「ID野球」「野村スコープ」「野村再生工場」……野村克也にまつわる言葉が多いのは、名将は言葉を操る仕事だということの証左であることもわかる。 　また、合間に挿入されるコラムも充実。球団史、変遷に加えて、球場の名称、守備位置、スコアボードの見方など、野球初心者には嬉しいコーナーも。「抜く」「泳ぐ」「絞る」など野球に使われる独特の動詞を解説した「野球動詞大辞典」は中継の野球解説を理解するのに役に立つ。 　著者の長谷川晶一氏もあとがきで書いているとおり、言葉はその時代の人々の思考、思想を如実に表わしている。どんな思いで、どんな考えを投影して人々は野球を観ているのか、それを知る上でも興味深い一冊である。 文／遠藤修哉（本誌）