ギャバン復活にオヤジ歓喜! 若い奴はこれ見て予習な
http://www.44sonic.net/ Twitter ID=@keisaku
「ゴーカイジャーVSギャバン」製作委員会(C)石森プロ・テレビ朝日・東映AG・東映
『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』。かつてこれほど胸躍る競演企画があっただろうか? 数々の傑作ヒーローを産みだし続けた東映が公開する本作は、現在放映中のスーパー戦隊第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』と、30年前に本格SF特撮ヒーローとして一世を風靡した宇宙刑事シリーズ第一作『宇宙刑事ギャバン』が大スクリーンで競演する。
35作品目というメモリアル作品である『海賊戦隊ゴーカイジャー』は、かつてのスーパー戦隊全ての歴史を繋げ、1975年に登場した一作目『秘密戦隊ゴレンジャー』から一昨年まで放映されていた『天装戦隊ゴセイジャー』までのヒーロー達が登場し、メイン視聴者である子どもはもちろん、“かつて少年だったオトナ”も楽しめる大胆な作品。懐かしのヒーローがゲスト出演する事も多く、ヒーローファンならずとも“戦隊魂”で育った幅広い世代にアピールし、現在も最終バトルに向けて絶賛放映中である。
昨年公開した映画『ゴーカイジャー・ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』のヒットでもわかるとおり、“劇場版のゴーカイジャー”というだけでもテンションが上がるのに、新春一発目の本作では30代以降の世代には思い入れの深い、宇宙刑事シリーズの第一作『宇宙刑事ギャバン』までも内包してしまうのだ!
◆30年の時を経て、今、復活するメタルヒーロー「宇宙刑事ギャバン」の魅力
1981年、日本が誇る二大ヒーロー番組である「仮面ライダー」と「ウルトラマン」の両シリーズが一旦幕を閉じ、翌年1982年に“全く新しい本格SFヒーロー”として登場したのが「宇宙刑事ギャバン」である。特撮ヒーロー番組としては東映史上過去最高の制作費を投入し、「仮面ライダー」を超える新たな単体ヒーロー作品として総力を結集した番組である。
子ども向け作品としては異例とも言えるのだが、キャラクターに使用する色数を抑え、全身をメタリックシルバーで包み、暗闇に輝く電子メカ、そしてブラックバイザーから光を放つオレンジ色のシャープな瞳、その全てが「この作品は今までとはひと味違う」ことを物語っていた。そしてこのヒーローデザインは1987年公開の米国映画「ロボコップ」のデザインモチーフになるほど、大人の観賞に堪えうるものとして異彩を放っていたのである。
当時の新聞記事では「ヒーロー番組」というより、「SFドラマ」として取り上げられていたのも納得だ。失踪した父親の後任として地球に降り立ったギャバンは地球上では一条寺烈と名乗り、銀河連邦警察が追う宇宙犯罪組織マクーによる犯罪を阻止、母親の故郷でもある地球を守るために戦う。
烈が装着コードであるキーワード「蒸着」と発するとき、特殊軽合金グラニウム製のスーツが電送され、わずか0.05秒でメタリックな輝きを持つヒーローになる。もともとは工業加工技術用語である「蒸着」という単語がそのまま変身の台詞になっているのも面白い。もちろん撮影で使用されている銀色のスーツも蒸着と呼ばれる表面処理方法だ。
今までのヒーローにあった「変身」をよりSF的に解説し、説得力を持たせたギャバンの変身プロセスは、烈役の大葉健二が見せるキレの良いアクションと共に衝撃を与えた。ちなみに蒸着ポーズの考案は大葉本人によるものだ。意外と複雑なこのアクションを必死にテレビを観ながら練習したのは筆者だけではないはずだ。
既にスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』『電子戦隊デンジマン』でレギュラーメンバーを演じていた大葉健二は、JACのエースとして体当たりのアクションにも挑み、「失踪した父を探しながら母の故郷を守る」という異星人と地球人の間で悩みながらも成長する等身大の主人公を演じた。毎回完結する変身ヒーロー作品としてのカタルシスと、父・ボイサー失踪の秘密を追うミステリアスな縦糸が絶妙に絡み合い、物語としても従来にない深みを持った作品となった。
今回スクリーン初登場となる『宇宙刑事ギャバン』は、もちろん大葉健二が演じるのだが、スーパー戦隊全てを内包する『ゴーカイジャー』とのカップリングということもあり、『バトルフィーバーJ』でのバトルケニア/曙四郎、そして『電子戦隊デンジマン』でのデンジブルー/青梅大五郎としても登場する。
さらに宇宙刑事シリーズの魅力は音楽にある、といっても過言ではないであろう。『マジンガーZ』『人造人間キカイダー』など、数々の勇壮なヒーロー音楽を生み出した作曲家・渡辺宙明によるギャバンの音楽世界は、毎回クライマックスに訪れるレーザーブレードでの戦闘シーンにおいて、その興奮が極限まで高まる。今回の『ゴーカイジャーVSギャバン』でも、宇宙刑事の代名詞とも言える宙明サウンドが新録音により、当時の興奮を上回る迫力で観客を魅了するはずだ。往年の挿入歌も新アレンジで登場するのでこのあたりもぜひチェックしていただきたい。
音楽と言えば、骨太のアニソンシンガーである串田アキラによる主題歌も忘れてはならない。R&Bミュージックの流れを汲む串田アキラのボーカルは『宇宙刑事ギャバン』において、従来の子供番組とは一線を画す迫力で歌い上げられた。歌詞の中にも「若さ、若さってなんだ? 振り向かない事さ!」など、子供にとっては早熟な人生への教訓が歌われている。筆者も未だに「愛とは…ためらわない事!」と信じて疑わない。それぐらい説得力のあるボーカルだったのである。
今回の映画でも串田アキラは『ゴーカイジャー』主題歌を歌う松原剛志とともに、新曲『JUMP』をリリース。颯爽と宇宙の大海原を進むゴーカイジャーのテーマを爽やかに歌い上げた松原剛志と、デビューから43年を経てなおも衰えを知らぬ串田アキラのソウル&パワーが、いったいどのようなコラボレーションを見せるのか? 「スーパー戦隊」と「宇宙刑事」、新旧いずれのヒーローファンならずとも劇場へ足を運んでその感動を確かめていただきたい!
【キムラケイサク】
映像作家兼アニメ特撮関係ライター。主な著書として『アニメソング解説読本・アニソンバカ一代』などがある。おたくトークユニット「おたく酒」として数々のアニメイベントをプロデュース。東中野にてアニソンBAR「44sonic」のマスターも務める。
ハッシュタグ