更新日:2017年09月27日 22:41
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警察も自治体も助けてはくれない…増え続ける「住民同士の騒音トラブル」

生活音、祭りの音、子供やペットの声etc.で殺傷事件に発展

 ’16年10月には千葉県館山市で、犬を散歩させていた80代男性が他の犬とリードが絡まったことをきっかけに、「鳴き声がうるさい!」と糞を取るスコップで相手の60代男性の頭を殴打する事件が発生。2人は以前から犬の鳴き声を巡ってもめていたという。  ’16年9月、愛知北名古屋市では「そろばん教室の子供の声がうるさい」と、40代男性が斧を持って侵入する事件が発生。机やげた箱などを破壊したが、25人の生徒たちは裏口から逃げて無事だった。  また、かつては日常の一部だった音まで、今では騒音として苦情が寄せられる事例が増えている。  東京都小金井市の千手院では、近隣住民から苦情を受けて’14年から大晦日の除夜の鐘を中止。静岡県牧之原市の寺は除夜ではなく昼間の「除夕の鐘」に切り替えた。その“苦情”は地域全域からのものではなく、寺にごく近い少数の住民からの苦情だった。さらに地域によっては、苦情によって朝のラジオ体操や高校の文化祭での打ち上げ花火が禁止された例も。春の花見での宴会や小学校の運動会にも苦情が寄せられている。

練馬区の対策は「管理組合や町内会に連絡を」と言うだけ

 さらには、「田んぼの蛙の声がうるさいので何とかしろと市役所に電話がかかる」(青森県八戸市)、「バス待ちの視覚障害者に行き先を知らせる録音テープの再生音がうるさいとバス停近隣住民からの苦情で10年にわたって中止に」(福岡市)、「誘導チャイムがうるさいとの苦情で鳥の鳴き声に変更。視覚障害者にとっては聞きづらくなった」(札幌市)など、かつてはなかった苦情が続出しているのだ。  東京都練馬区に年間何件の騒音苦情が寄せられたのかを尋ねたところ、「苦情が寄せられてもカウントしていないんです」と回答。そして、区が直接対処に乗り出すのではなく、マンション住民なら「管理組合に相談してください」、戸建て住宅の住民には「町内会に連絡してください」などありきたりの回答をするだけなのだという。  横浜市内のあるマンションの管理組合長Aさんはこう語る。 「管理組合といっても同じマンションの住民ですから、『騒音を出さないようにしましょう』といった一般的なお知らせを掲示板に貼るのがせいぜいです」  住民にすれば、頼るべき役所は頼りにならず、かといって、騒音を出す相手に直接苦情を言ったり警察に通報したりすれば、大きなトラブルに繋がりかねない。なかなか解決方法がないのが現状だ。
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最近だけでも数々の騒音トラブルによる大事件が
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