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元ジャパネットたかた名物社長が明かす「V・ファーレン長崎、奇跡のJ1昇格」の舞台裏

日本のサッカービジネスは本当に厳しい環境にある

――最後の13試合は10勝3分け負けなしの快進撃でした。こうもいきなり成績が変わるのは珍しいことですが、その要因はなんでしょうか? 髙田:さまざまなことの相乗効果でしょう。選手がプレーに専念し、それを観たファンがまたスタジアムに戻ってきた。やはりファンがスタジアムに来ることはチケット収入の面でも大きいですよ。そうすると前よりも収支の面で安定し、また監督や選手の不安がなくなり……。そんな好循環が生まれたことが、「長崎の奇跡」を手繰り寄せました。 ――ファンを増やしたというところは具体的にどう増えたのですか? 髙田:私が社長になった当時は一試合4000人ほどでした。それが次第に増え、昇格を目指せるという位置までいったところで1万3000人、そして最後は2万2000人です。ただ、私はビジネス的な収益だけを求めるのだったらサッカービジネスに手を出しませんよ。なんせ、日本にあるJクラブの多くが、過去に経営の危機を経験しているわけですから。レアル・マドリードなどのようなヨーロッパのクラブとは規模感が全然違うし、日本のサッカービジネスは本当に厳しいですよ。 ――なぜ日本では、ビジネスとしてのサッカーが難しいのですか? 髙田:私はいつも野球と比べるのですが、やはりプロ野球はチーム数こそサッカーより少ないものの、圧倒的に日本のスポーツ文化に根づいています。長崎の人だってみんな福岡ソフトバンクホークスを応援しますから。Jリーグも昨年25周年を迎えて、先人方のすさまじい努力のおかげで存続しているわけですが、そろそろもう一つ先のステージに持っていかないといけないと思います。  恐らく選手、監督、スタッフ、協会関係者全員がサポーター、ひいては日本国民に対しても接し方を変えないといけない。同じ目線に立つ必要があると思います。例えばファンからサインや写真を求められたらお応えする。ファンに向き合うんですよ。さらに、試合だけでなくその前後の時間を楽しんでもらうための企画が必要です。試合前の催しや、女性や子供に向けた取り組みも。  V・ファーレンではサイン会やトークショー、よさこい踊りをするなどさまざまな施策を行っています。少しでも興味を持ってもらえるならと、私もサポーターの皆さまの前に立っています。結婚式場を運営する会社がスポンサーになってくれているので、例えば試合前に結婚式をするとか、そういったことも考えていますよ。 ※このインタビューは2/20発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです 【髙田 明】 V・ファーレン長崎代表取締役社長。’48年、長崎県生まれ。大阪経済大学を卒業後、会社員を経て30歳で佐世保に「カメラのたかた」を出店して業績を拡大させ、’99年には社名を「ジャパネットたかた」に改める。その後は通販番組で人気を得るが、’15年に同社社長を退任。V・ファーレン長崎社長に就任した 取材・文/建部 博 撮影/尾藤能暢
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週刊SPA!2/27号(2/20発売)

表紙の人/ 松本潤

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