町田 忍氏に聞く [ニッチ系評論家]で成功する秘訣
―[[ニッチ系評論家]の奥深~い日常]―
町田 忍氏に聞く
これが[ニッチ系評論家]で成功する秘訣だ!
この道はゆとりが必要。好きが高じてという気持ちが一番!
身近にある、あらゆるアイテムを収集する街頭浪漫研究家の町田忍氏は、ニッチ評論・収集の醍醐味をこう語る。
「庶民文化における意匠とは、長く収集することで、謎を解くカギが見えてくる。誰もが見過ごすような身近なものにこそ、奥深い意味が隠されているんです。ニッチなアイテムの収集・評論は、そんな対象の正体を探り、体系化していく知的な遊びです」
町田氏の専門はマッチから無料配布されるウチワまで、現在約150ジャンル。専門分野は増えこそすれ、減る気配はないという。
「好きでやっているから仕方がないけど、モノを置く場所がどんどんなくなってきて大変なんです」
確かに町田氏の事務所は足の踏み場もないほどモノが山積み。評論活動の歴史が感じられる。
「きっかけはメンコですね。あとはバナナのラベルやチョコレートの包装紙。僕らの子供時代には貴重品でしたから、食べた記念を取っておこうとしたら、いつの間にか広がってしまった(笑)」
それだけ聞くと趣味がそのまま仕事につながったようにも聞こえるが、食えるようになるには、やはり一筋縄ではいかないという。
「僕も大学卒業後、約10年間はコックやさまざまな仕事で食いつないでいました。’81年に『ポパイ』がコレクション特集で、収集していた納豆のラベルを取り上げてくれてから、兆しが見えましたね」
そこでほかのコレクションも知られ、メディアのオファーが殺到。以来、仕事として膨大なアウトプットをし続けている。だが驚嘆すべきは、現在に至るまで、それを上回るインプットを続けていること。その源泉とは?
「もともと仕事とは思ってませんから(笑)。僕の場合は『好きを仕事にする』というより、『好きが昂じて、勝手に仕事になった』。もっとも生活不安は40年やっていても変わりません(笑)。この道には気持ちのゆとりが絶対に必要。そのためにも、まずほかに仕事を持っておくことをおすすめします」
ニッチ系評論家への道は、やはり険しい。だがその一方で、ひたすらに突き進めば道は開けるとも言えるのかもしれない。
【町田 忍氏】
’50年東京都生まれ。和光大学在学中に博物館学芸員の資格を取得し、以来庶民文化における風俗意匠を研究。『納豆大全』(小学館)、『入浴はだかの風俗史』(講談社)、『ザ・ジュース大図鑑』(小社)など著書多数
取材・文/港乃ヨーコ 水越恵理子 高田純造 中尾 巴 樋口 淳(本誌)
撮影/伊藤星児
― [ニッチ系評論家]の奥深~い日常【11】 ―
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